(この記事は、2016年8月9日にサイト「ヒューマンキャピタルOnline」のコラムに掲載された記事を転載しています)

えるぼし認定企業は105社、最高位の三つ星は78社に

 女性活躍推進法施行から4カ月が過ぎた。301人以上の企業は同法で女性活躍に関する目標を含む行動計画の策定及び労働力への届け出を義務づけられているが、その届け出状況は、対象1万5457社のうち1万4855社が届けており、届け出率は96.1%となった(6月30日現在・厚生労働省)。

 この法律には、女性活躍の状況が優良な企業を認定する制度がある。認定は基準を満たす項目数に応じて3段階に分かれており、認定マーク(愛称「えるぼし」)の星の数で、「一つ星」から「三つ星」まで表される。このマークは商品や広告、求人等に使用でき、女性活躍企業であることを、学生や消費者、取引先、投資家など様々な利害関係者にアピールできる。

 この「えるぼし」認定企業は、6月30日末で105社となった。最高位の3つ星は78社で、曙ブレーキ工業、イオンリテール、カルビー、清水建設、高島屋(*注)、日本電気、パナソニック、東日本旅客鉄道などが三つ星認定企業となった。「三つ星獲得で社内の士気が上がり、いい会社に勤めているという実感がわいた」という社員が多い。「インナーコミュニケーションにも有効」「今の学生はワークライフバランス志向が強いため、認定を受けたことは男子学生のいい反応にもつながる。人材獲得に期待」など、三つ星獲得企業からは早くも効果を実感する声が上がっている。
(*注:高島屋の「高」は「はしごだか」)

(C)PIXTA
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公共調達で女性活躍企業を優遇、その規模は5兆円に拡大

 また、政府は公共調達に関する新たな取り組み指針を決定した。これは国の事業の入札に際し、女性活躍加速のため、くるみん、プラチナくるみん(どちらも厚生労働省が子育てサポート企業を認定するもの)、えるぼし認定企業などワークライフバランスを推進する企業を優遇するとしたのだ。

 この中ではえるぼし三つ星企業が最も配点が高い。内閣府の推定では、対象となる契約は、5万~6万件に上り、総額5兆円規模の見込みだ。14年度はその対象は36事業約10億円だったため、一挙に規模が大幅に拡大する。えるぼし獲得がステークホルダーにアピールするだけでなく、受注や売上拡大にも結び付くのである。

「女性活躍」はダイバーシティマネジメントの試金石

 行動計画策定までの昨年から昨年度末にかけた企業の集中的な取り組み、および関心の高さから比べると、今は、各社がおのおの行動計画を遂行するという時期でもあるため、多少の一服感や計画が立て終わって“一丁上がり”感もある。

 本当は、ここから女性活躍のPDCAサイクルを回していかないといけないのが、「新法対応のため(実は仕方なく)行動計画をつくったけれど、そもそも女性活躍って必要だっけ?」「ウチは女性が十分活躍しているからこれ以上はいいかも」「女性自身が昇進を望んでいないのだから無理に昇進しなくてもいいのでは?」などなど、今後のバックラッシュを感じさせるような声がないわけでもない。今後は、「女性活躍」の真意を深く理解してギアを入れて加速する企業と、画餅に終わってしまう企業に二極化されていくのではなかろうか。それは、女性活躍をキーとした経営革新を目指すかどうかの差だともいえるだろう。