女性活躍先進企業が目指していることは、単なる「女性だけの活躍」ではない。「女性活躍」を起点とした経営の革新である。ゴールは「女性活躍」ではなく、「多様な人材がその能力を最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげる経営」(『成長戦略としての女性活躍の推進』経済産業省/2016年2月)、つまり、ダイバーシティマネジメントである。女性の活躍はその第一歩、試金石(イントロダクション)ととらえている。

「この時代に我が社が勝ち残っていくために必要なのがイノベーションの創出だ。イノベーションとは多様な意見がぶつかりあうところで生まれる」
「多様化した市場のニーズに応えるためには組織も多様化しなければならない」
「ダイバーシティはイノベーションの源泉であり、成長エンジンである」

 上記は、「なぜ女性活躍を進めるか」と問うた時の様々な業界の企業トップの言葉である。

「女性活躍」をキーとした経営革新が重要となる

 ダイバーシティマネジメントの第一歩である女性活躍を進めるためには、全社的な取り組みが必要である。それは、なぜ、女性が活躍できないかということを考えると明らかであろう。

 まずは、きちんと女性が採用されているかどうか。採用段階で、優秀な女性人材を逃してしまうというような事態になっていないか。男女の平均勤続年数はどうか。男性は長く働き続けるけれど、女性は早期離職してしまうということはないか。女性が早く辞めるということは人事管理上の大きなロスである。リテンションマネジメント(人材の定着・確保)に問題があるということだ。

 労働時間はどうか。長時間労働が美徳というような旧守的な価値観や労働慣行はないか。そのような職場では女性だけでなく、共働きの男性従業員や介護を抱える中高年の従業員も活躍できない。ワークライフバランス環境は、今や女性従業員だけの関心事ではない。育児も介護も男性従業員にとっても自分ごととなっている。「ワークライフバランスはリテンションマネジメントのプラットフォームとなった」と指摘するのは、青山学院大学の山本寛教授だ。

 そして女性が管理職としてきちんと登用されているのか。女性管理職が誕生するためには、(当たり前のことだが)女性を採用し、採用した女性が働き続け、リーダーとして育成されることが条件となる。それが、「女性は管理職に向かない」などの男性上司の固定観念や、「男性は仕事、女性は家庭」という性別役割分担意識が影響し、女性の育成が阻害されていないかどうか。もしそうであればこれも大きなロスである。