オーガニックコットンを通して地球環境に貢献する

――オーガニックコットンの事業を始めて約30年ですが、日本の市場は広がっていますか。

渡邊:アバンティの売り上げは年々、上昇して、現在は11億円(2015年度)です。けれどもオーガニックコットンの市場そのものが増えているかというと、日本だけではなく世界でもまだまだですね。世界中で取引されている綿のオーガニック率は0.7%にすぎませんから。

――オーガニックコットンが市場に増えることで、自然環境にどのようなインパクトを与えるのでしょうか。

渡邊:それにはオーガニックではない綿が、自然環境に与えるダメージを説明するほうが、分かりやすいかもしれません。綿の栽培で、10年ほど前から最も問題になっているのが、遺伝子組み換えの種の問題です。綿の遺伝子組み換えの種は、除草剤と対応しています。除草剤をまいたとき、雑草は枯れるけれども綿は枯れないように、遺伝子を組み替えた種がつくられ、それが世界の綿の栽培地で使われているんですね。現在、世界で栽培される綿の約8割が、遺伝子組み換えだといわれています。ところが、遺伝子組み換えの綿は特許を種子会社が持っているために、毎年買わなければならず、インドなどの途上国の農家が借金を負ったり、除草剤で健康を害したりする問題が起きています。

――「循環型農業」になっていないのですね。

渡邊:その通りです。除草剤以外にも、綿の栽培には化学肥料、殺虫剤、落葉材と、多くの薬剤が使われています。こうした薬剤が土壌を傷め、生態系に影響を及ぼすことが懸念されているのです。世界の耕作面積の約2.5%に綿が植えられているのですが、その栽培に使われる化学薬剤の量は、全世界で使用される化学薬剤の16%にのぼるともいわれているんです。

――一方で、オーガニック農場ではどのように栽培しているのですか?

渡邊:化学薬剤は使わず、例えばアブラムシの駆除にはテントウムシの力を借りたり、肥料も牛糞や枯れ葉などの有機肥料を使ったりしています。

 もう1つ、深刻なのが途上国の児童労働の問題です。ノーベル平和賞を受賞したカイラシュ・サティヤルティ氏が設立したNPOが2012年に発表した調査レポート(※)によると、インドの綿花生産地域の約90%を占める4つの州で、約38万人もの児童労働者(18歳以下)がいて、そのうち約4割が14歳未満といわれています。インドの綿花生産地で児童労働をなくすために、私は現地の子どもの就学や職業訓練を支援するNPOの活動にも協力しています。

※ NPO「児童労働に反対するグローバルマーチ」の「DURTY COTTON 2012年版」より

――オーガニックコットンを買うことは、もう一つの世界を支持することになるのですね。こうした「エシカル消費(倫理的な消費)」を意識するユーザーも増えてきています。

渡邊:はい。そういうことを私たちはちゃんと消費者に伝えなければいけない。なんでも安いからいいのではなくて、そのバックグラウンドを感じてもらえるように情報を伝えていくことが大事だと思っています。

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