地域資源を観光に活用しながら保全する方法を考える

――当初は釣り中心のツアーを行っていたそうですが、どんなきっかけでエコツーリズムを意識するようになったのでしょうか。

江崎:2003年に三重県が無人島ツアーを企画し、私たちに協力を求めてきました。鳥羽の人たちがとても大切にしている島だと知っていましたから、観光客を入れたら環境が荒らされてしまうと思い、いったんは断わったんです。でも、よく考えると、私たちが断ったからといって環境が守られるという保証はない。それならば、私たちが積極的にかかわって、この島を観光資源として上手に活用しながら環境を守っていくやり方を考え、実行したほうがいいと思ったんです。

 そこで、「漁場を傷めない」「環境にやさしい」「島をPRする」「お客様の安全性、快適性を考える」という基本方針を決めました。島に上陸する人数を制限し、磯の生き物とふれあう際のルールも決めました。

――その当時から、エコツーリズムという言葉をご存知だったのですか。

江崎:そのときはまだエコツーリズムという言葉を知りませんでした。それに、観光のために自然を壊さない、というのは当たり前で、特別なこととは考えていませんでしたね。でも、今考えてみると、この無人島ツアーがエコツーリズムを意識するするきっかけになったと思います。観光というのは、地域資源の使い捨てをして、環境保全や地域振興を忘れがちな面もある。これからは、自然の保護と利用を両立させる意識をしっかり持たなければならない時代なのだと気づかされました。

「かまど」とは海女が休憩する海女小屋のこと。「かまど」で現役海女さんの話を聞きながら食事やおやつを食べる体験ができるツアーも人気だ。(上)相差(おぜご)かまどで海女の皆さんと。海女さんが焼いた海の幸を堪能する。(下)かまどの中

――無人島ツアーに携わったことは、「海島遊民くらぶ」のフェーズが変わった出来事でもあったわけですね。

江崎:そうですね。エコツーリズムの考えが確立されたことだけではありません。観光立国推進基本法の中に関係機関による連携の確保の重要性に触れた箇所がありますが、無人島ツアーを行うとき、地元の漁師さん、住民、行政など、いろいろな機関、人とかかわり、連携できたことも私たちにとって重要だったと思います。それぞれが「地域資源を守る」というビジョンを共有し、お金のやりとりだけではない信頼関係が構築できたからです。そのおかげで、この無人島ツアーはずっと継続しており、多くの人に楽しんでもらえる企画になっています。

 地域資源は、漁業と観光をつないだり、教育と産業をつないだり、人と人とをつないだりする結び目のようなものだと思います。観光客にウケるものを掘り起こして飛びつくのではなく、地域資源を観光化することによって、どんな結び目ができるか、どんなよい循環が作れるかを意識していくことが大事だと思います。