自分の正確な勤務時間を記録して。10時間を超えたら要注意

 川人弁護士は、まず、毎日の正確な労働時間をつけることが大切だと指摘します。

 「ホワイトカラーの職場は、実際よりも過少に労働時間を申告することが当たり前になっています。ですから、日常的に始業時間と終業時間を記録しておくことが重要です。正確な労働時間の記録があれば、労災認定を受けやすくなります。また記録があれば、体調が悪くなって医師の診断を受けるにしても原因が見つかりやすくなります」

 今回の高橋さんのケースが労災認定されたのは、電通が入退出ゲートで時間を管理しており、その記録によって残業時間が本人の自己申告していた約70時間ではなく100時間を優に超えていたことを証明できたことが大きいといいます。

 パソコンのログイン、ログアウトの記録でもいいし、手帳に毎日自分の勤務時間を書き込むのでもいいそうです。

 「日本は長時間労働をよしとする国なので、その中で、自分が働き過ぎてないかどうかとチェックすることが大切なのです。その目安は1日10時間くらいでしょう。それが本来の人間の限界だと思います。記録をつけてみて、1日10時間以上働いたら長時間労働と考えて要注意と思ってください。この状態を超えたら異常だと思う感覚を持つことが大切です」

 もし、自分が働き過ぎているのならば、そして調子がよくないのであれば、そのことを上司に伝えましょう。そのような異議申し立ては、職場に波風を立てるものとして抵抗があるかもしれませんが、今は異議申し立てがしやすくなっているのです。今回の事件を、政府も多くの企業のトップも重要なこととらえているからです。たぶんあなたの勤めている会社でもそうだと思います。

 安倍総理がこの件で「働き過ぎによって尊い命を落とされた。こういうことは二度と起こってはならない」とコメントをしました。一企業について総理が言及するのは極めて異例のことだそうで、「政府としても本気で取り組まなければいけない表れです」と川人弁護士は言います。社会全体として、長時間労働を是正しなければいけないという意識が醸成されているのです。

もし、自分が働き過ぎているのならば、そして調子がよくないのであれば、相談しましょう (C)PIXTA
もし、自分が働き過ぎているのならば、そして調子がよくないのであれば、相談しましょう (C)PIXTA

 そして組合や産業医に相談しましょう。前述した日経ウーマン1月号の企画でも、「労働組合に相談して、現在は組合が会社に話をしてくれている」との35歳の商社事務の女性の投稿がありました。

 「究極の自己防衛としては、退職という選択もあると思います。自分が退職したいのに会社が辞めさせてくれないという声もありますが、法律では、退職の意思を表示して2週間経過したら退職できることになっています。労働に関する法律、ワークルールを学ぶことも身を守るために重要かと思います」