「命よりも大切な仕事はありません」

 川人博弁護士も、今の状況に対し、かつてない手ごたえを感じているといいます。

 「高橋さんのことが、ここまで社会的な意味で注目され、こうした状況を変えなくていけないのではないかという世論が形成されているのは、彼女の職場で起こったことが、日本の多くの働く女性が直面している問題だからでしょう。

 この問題は根深く一朝一夕では解決はできません。しかし、それぞれが自分が何をすべきかと考えて行動を起こすことが大事です。今が日本を変える大きなチャンスだと思います」(川人弁護士)。

 昨年の12月25日に高橋さんは命を絶ちました。

 11月9日、東京都内で開催された厚生労働省が主催する「過労死等防止対策推進シンポジウム」に登壇した母・幸美さんは、その日の朝の高橋さんのメールの内容を明かしました。

 そこには「大好きで大切なおかあさん、さようなら、ありがとう。人生も仕事もすべてつらいです。お母さん、自分の責めないでね。最高のお母さんだから」と書かれていたといいます。

 幸美さんが訴えた「命より大切な仕事はありません」というメッセージ。これを心に深く刻み、このような悲しいことが二度と起こらない社会にしないといけないと強く思います。

文/麓幸子 写真/PIXTA