「見えないプレッシャー」を感じて帰りづらいという読者の声を受けて、山本憲明さんはこうアドバイスします。

【山本さんのアドバイス】

 「職種や役職によっては難しいと感じる人もいるかもしれませんが、小さな仕事でも、なるべく自分の力でコントロールするようにしてみましょう。

 例えば、早く帰ろうと思っていた日に上司から仕事を振られました。そのとき、上司には『締め切りは○時でよいですか』『○日までには仕上げます』と質問や確認をします。そうすれば、自分で仕事内容を決められない立場であったとしても、自分が主導権を握ることは可能ですよね。その上できちんと仕事の成果を出していれば、周囲の信頼を損なうことはありません。早く帰ることに対して必要以上の罪悪感を持つ必要はないのです。

 2000年頃までは『長く働くのが偉い』『残業が評価につながる』といった風潮がありましたが、今は残業代がそれほど出ないという企業も多く、長く働くほど労働力も給料も搾取されてしまう傾向にあります。仮に、まだ現状がそうではなくても、『仕事に時間をかけて給料をもらう』よりも、『限られた時間で成果を出す』方向にいずれシフトしていくでしょう。

 一人ひとりのアクションは小さなアクションでも、今からコツコツと自分の意識を変えるトレーニングをしておけば、社会の意識が変わっていく中で自分自身の価値も高まっていくと思いますよ」(山本憲明さん)

「休みの日も仕事のことを考えてしまう」という人の対策

 平日に早く帰ることに苦労している人にとっては、さらに「仕事を休む」となると、ハードルが上がる気がしますよね。読者の皆さんに「上手に休めていない」と感じる理由についても聞いてみました。

Q2.あなたが「上手に休めていない」と感じる理由は何ですか?

■休みの日もなんとなく仕事をしてしまう

休みの時ほど、仕事のアイデアがひらめいて仕事したくなる(38歳・情報通信・IT・研究開発)

休みの日も何となく仕事のことを考えてしまっている。休みの日にやりたいことを考える余裕もなく、気づいたらいつも直前になってしまい、休みにイベントを入れられない(33歳・医療福祉関連)

他の同僚が有給休暇を取るのが早すぎて(私が予定を立てるのが遅いのか?)取れる日程がなくなっていることが多い(31歳・サービス・接客)

休日は家事という仕事があって辛い。夏季休暇の序盤は仕事の引き継ぎがうまく行っているか、つい気になってしまう(31歳・保険・一般事務)

休暇後に溜まった仕事が気になってゆっくり休めない。いつも長期休暇を取った後は、机の上が書類でいっぱいになっている。休暇中でも気にせずに電話をしてくる人がいる(些細なことでも!)(37歳・コンサルティング)

スキルアップのために『あれをしよう』『これを完成させよう』と思うものの、結局ダラけて時間を無駄に過ごしてしまう(30歳・広告制作)

 ほかにも「長期休暇を取る人がいないので、取りづらい」「人員が足りないので長期休暇は無理」「休みの計画を立てるのが苦手」といった声が多く、「上手に休めている」人は少数派でした。

 山本さんはこの状況に対して、「長く休むこと、平日に休むことに罪悪感を持つ文化が残っているため」だと分析します。

【山本さんのアドバイス】

 「休暇中に自分の仕事で他人に迷惑をかけないというマナーを守っていれば、休むことは当然の権利ですし、何ら問題はないはずです。逆に、休みの日は絶対に仕事をしてはいけないというルールもありません

 休暇中に仕事のことが気になる人は、『メールに目だけは通しておく』『休みが終わる前日にはタスク管理を済ませておく』といったマイルールを決めておきましょう。自分の決めたルールを守って実践すれば達成感が、休暇後すぐに仕事に取りかかれる安心感だって生まれます

 日本はこの先、働くシニア層が増えたり、AIが導入されたりして、仕事自体が減り、『週休3日』になるという可能性もあります。その時に『休んでも何もすることがない』のはもったいないですよね。『休みに何をしてよいか分からない』という人も、休みを積極的に楽しめる方法を考えておきましょう。

 休みの日にすることや早く帰ってやることは、『美術館へ行く』『海外旅行をする』『セミナーに参加する』といった高尚でキラキラしたことでなくてもいいのです。『掃除機をかける』『シーツを全部洗う』『DVDをひたすら見る』『書店でお気に入りの本を見つける』『子どもと公園に行く』など些細なことでもいい。小さな日常のやることもやりたいこととして取り組めば、ただ時間が過ぎ去るだけに終わらず、達成感や充実感が得られると思います」(山本さん)

ヨガにジム、英会話に部屋の片づけ…早帰りできたら、したいこと

 では、読者の皆さんは、休みの日や早帰りの日にどんなことをやってみたいのでしょうか。小さなことから大きな夢まで、語ってもらいました。「何にも思い浮かばない」という人にとっては、ヒントになるかもしれません。

Q3.あなたはもし早い時間に帰ることができたら、きちんとしっかり休むことができたら、どんなことをしてみたいですか?

学校やジム、美容院に通院など、今は休日にしていることを平日の夜に済ませて、もっと休日の時間を充実させたい(40歳・製造・人事)

平日夜は1時間勉強し、早く寝て、朝30分で昨日の復習というルーティンを作りたい(29歳・不動産・人事)

毎日、自炊をする。18時からの舞台やコンサートへ行く。映画を見る。デパートに寄る。イベントに参加する(36歳・サービス・総務)

英語やタイ語の勉強。ヨガやウォーキングなどの運動。ボランティア活動など、地域の方との交流(39歳・製造・研究開発)

娘と一緒に夕飯をつくりたい。娘と一緒に話す時間を設けたい(34歳・医療福祉関連)

 ほかにも「部屋の片づけ」「カフェ巡り」「自分一人の時間を持ちたい」といった声が上がっていました。実践できたらハッピーなことばかりですね! 続いて、休みの日にやってみたいことを紹介しましょう。

「今日、なにしよっかなぁー」という日があってもいい (C)PIXTA
「今日、なにしよっかなぁー」という日があってもいい (C)PIXTA

二泊三日くらいの温泉旅行。断捨離(42歳・保険・営業)

ヨーロッパに行きたい。アルバムの整理、撮りためた写真の整理をしたい(29歳・不動産・企画・マーケティング・宣伝)

今まで『この日は休めるかどうか、まだ分からないの、ごめんね』と断ってしまった誘いをすべて受けたい。大好きな旅行もキャンセルするはめにならないよう、早割を使って思う存分、予定を組み立てたい(37歳・医療福祉関連)

ゆっくり時間に追われずに休んで、自分が何を好きだったのか思い出したい(26歳・医療福祉関連)

運動不足や体型の緩みが気になるので、ジムに行って体を鍛えたい。食事制限や家で行う自主トレーニングには限界を感じている(33歳・サービス・一般事務)

 断トツで多かったのは「国内・海外旅行」、ほかには「予定を立てずにダラダラしたい」、「部屋の片づけ」といった声が上がっていました。

 「なかなか思うように早く帰ったり、しっかり休みを取ることが難しい」という声も届いていますが、読者の皆さんの職場には、強引なやり方で早く帰っている人やきっちり休んでいる人もいるようです。次ページでは、読者アンケートに寄せられた「このやり方はないよね」というNG例を紹介します。