迷惑をかける側/被る側という構図

 実は私も学生時代、お酒を飲むことが大好きな女性と付き合ったことがあります。彼女はいったん飲み始めると泥酔するまで飲んでしまうタイプで、吐いたり、記憶をなくしたり、気付いたら道端で寝ていたり……酔ったまま自転車で転んで前歯を折ったこともありました。

 私はそんな彼女の酒癖を、内心でちょっと疎ましく思っていました。もちろん健康面や安全面の心配はありました。現に前歯を折っているし、道端で寝たのも、一歩間違えれば性暴力や命の危険に遭いかねない行為です。そういう心配はもちろんあったのですが、それと同時に、単に面倒くさいという思いや、酔っぱらって自我を解放できる彼女に対する嫉妬のような気持ちもあったように思います。

 それで当時の私は、「彼女=迷惑をかける側/自分=迷惑を被る側」という立場で「何でほどほどに飲めないの?」と彼女に説教したり、断酒を勧めたり、「なぜ泥酔するまで飲んでしまうのか考えてみよう」などと言ってカウンセリングまがいのことを試みたりしていました。

 実際に彼女がどう受け取っていたかは分かりません。しかし、今思えば「むしろ無用なストレスをかけてしまっただけでは……」という気がしています。よくケンカに発展していたし、実際に「心配してくれるのはありがたいけど何か息苦しい」と言われたこともあったからです。