すでに直感レベルでは判断が下されている?

 さて、ここまで彼と飲酒の関係について考えてきました。「飲酒は彼を構成する一部分」というのが我々の考えでした。これは「○○さえなかったら……」と発想する場合の○○に入るものの多くに通じる話だと思います。

 それを踏まえた上で、未来さんは彼との関係を進めるべきか否か──。我々としては、現在のような状態ならば彼と付き合うことはあまりオススメできません

 理由はいくつかあります。まず、仮に彼がアルコール中毒だったとした場合、これは医師やカウンセラーといった専門家の力を借りないと太刀打ちできない問題です。たとえ「アル中の一歩手前」であっても、少なくとも現在経験しているようなことが繰り返されるはずで、そういう人と付き合うには相当の覚悟(=「飲酒も相手の一部」と受け入れ、根気強く付き合っていくこと)が求められます。

 未来さんはここへ相談を寄せていることからも分かるように、関係を進めるにせよ切るにせよ、その判断の確証を外部から調達しようとしています。パートナーのアルコール依存のような深刻な問題に直面したときに、自分だけで抱え込もうとせず、外部の力に頼ることは重要です。ただ、それは問題を問題として判断できて初めて出てくる発想や対処法です。その判断ができなければ、仮に自分のなかで違和感があっても「まあ、こんなものなのかな」と問題化せずに蓋をして、結果的により深刻な状況に陥ることになりかねません。

 恋愛関係は基本的に「私とあなた」という1対1の関係であり、いわば密室のようなものです。そのため、いざ付き合いが始まれば、基本的にすべての判断は自分で下していかねばならないわけで、そのときに頼りになるのは自分の感覚や経験だけであることがほとんどです。今の時点で未来さんの中に違和感があり、付き合う決断が下せないならば、むしろそれは「付き合わないほうがいいだろう」という内発的なシグナルと捉えるべきではないか。そう考えると、すでに直感レベルでは判断が下されている、とも言えるかもしれません。