ダメ出しが気になる第一の要因とは

 彼によるWEBサイトや映画などの創作物に対するダメ出しが、なぜ、真由さんの中で大きな問題となっているのか。

 第一に考えられる要因は、真由さん自身がWEBサイトのプログラマーという「作り手」であることです。相談文には、彼がWEBサイトを批判しているとき、「そうなっている事情を想像すると、いたたまれない気持ちになる」と書かれています。このとき明らかに真由さんは、彼にダメ出しされているWEBサイトの作り手に自分を投影しています。

 そのため、彼が見知らぬWEBサイトを批判する度に、真由さんは自分がダメ出しされているような気持ちになり、少しずつ傷つき、同時に反発を覚えているのでしょう。

自分が批判されているような気持ちになる
自分が批判されているような気持ちになる

「受け手」と「作り手」という構造

 この構造は、映画や漫画など他の創作物についても同じです。内容の性格や質を考慮せずに大きく分けるならば、世の中には創作物の「受け手」と「作り手」の二つのカテゴリーがあり、公務員である彼は受け手側に、WEBプログラマーである真由さんは作り手側に属しています。

「受け手」と「作り手」
「受け手」と「作り手」

嫌悪感や違和感の正体

 このように見ていくと、真由さんが彼のダメ出しに対して感じている嫌悪感や違和感は、帰属先の異なる人間による、自分の帰属先への批判に対する反発や傷心であると捉え直すことができます。

批判と反発
批判と反発

 これは、自分の出身地や出身校、または所属している会社やサークルなどが、他人からいわれなき批判を受けたときの感情をイメージすると分かりやすいかもしれません。あるいは、古くからの友人のことを、自分の恋人が軽はずみに批評したときの心の動きにも似ていると思います。

 こういった感覚は、読者の皆さんの中にも覚えがある方が多いのではないでしょうか。ケンカの火種としては定番とすら言えるかもしれません。真由さんが抱えている問題は「作り手vs受け手」という、やや特殊な事情ゆえに発生しているものではなく、実は誰にでも起こり得る問題なのです。