頭では分かっているのに、なぜか体が拒絶反応

 まずは智美さんの現在地から考えていきたいと思います。この相談文から見て取れるのは、「理屈と実感の不一致」とも言うべき混乱です。

 智美さんを悩ませているのは、好意的で優しくて、稼ぎとメンタルが安定しているという「マトモ人」の男性です。しかし、結婚相手としても申し分ないはずなのに、デートの直前になるとなぜか突然イヤになってしまう……。この現象が自分自身でもイマイチ理解できないことが、智美さんの悩みの種になっています。

 では、なぜ「イヤになる」のか。ヒントとなるのが、すぐに泣く、連絡をくれない、キープしてくるといった過去の恋愛相手たちです(以後、彼らのことを「クソメン」と呼びます)。

 クソメンとの関係は、智美さん的には「超楽しい」ものであり、それと同時に苦しいものです。なぜならクソメンはすぐに泣き、連絡をくれず、キープしてくるからです。一方のマトモ人には智美さんを苦しめる要素がなく、「結婚して子どもが欲しい」という希望を叶えてくれそうでもあります。そんな相手がこちらに好意を抱き、デートにも誘ってくれる。これはもう、マトモ人と付き合えば万事オッケーでしょ!

 ……となれれば、何の苦労もありません。頭では分かっているのに、なぜか体が拒絶反応を示している。だから混乱しているのです。

 さらに、この背景には「社会規範」や「外野からの圧力」といった要素の影響も考えられます。「もう30なんだし、ぜいたく言ってらんないでしょ!」「そんなマトモな人にアプローチされてるなんてむしろラッキーだよ」「大丈夫、トキメキなんて誰と付き合っても3年でなくなるから」みたいなことを、自分で自分に言い聞かせてはいないでしょうか。あるいは、実際に友達やメディアといった外野から言われてはいないでしょうか。

 いずれにせよ、理屈で考えれば「付き合うべき」という結論になるのに、身体的な実感としてはそこに違和感を覚えている。しかし、その原因はもしかしたら取るに足らないことかもしれない。それさえ割り切ることができれば、マトモ人と幸せな未来が待っているのではないか。でも、本当にそれでいいのか──。

 これがモヤモヤした気持ちの実態であり、智美さんの現在地です。では、彼女が割り切ろうとしているものの正体とは、一体なんなのでしょうか。