なぜ男性たちは予定を決めたがらないのか

 約束事は先約優先が原則なのに、男性たちはなぜか予定をハッキリ決めたがらない。「もしかしたら私に原因があるの?」という不安もチラつくが、そう考えるのも怖い──。その果てに出てきたのが、〈約束事って、基本的には先約優先だと思うんですけど、男の人は違うの?〉という疑問だと考えられます。

 ではなぜ、男性たちは予定を決めたがらないのでしょうか? そして男性たちは、約束事をする際にどんな原則に従っているのでしょうか?

 残念ながらゆうこさんが接してきた男性たちの声を直接聞くことはかなわないので、今回は「あまり予定を決めたくない」「予定を決めるのが正直苦手」という自覚を持つ男性たちに取材をしてみました。以下、そこで語られた言い分を紹介してみます。

【男性たちの声】
・仕事が忙しいので、先の予定を聞かれても分からない
・関係が近い人ほどかっちり予定を決めなくても大丈夫という意識がある
・もっと行きたい予定が入るかもしれないから、なるべく保留にしておきたい
・「会いたい」というモチベーションが高まったときに約束を決めたい
・そもそもスケジューリング全般が苦手
・目先のことでバタバタしているので未来のことは考えられない
・ちゃんと約束しちゃうと何かあったときに断りづらくなるから怖い
・選択肢をいくつか持っておいて、そのときの気分で決めたい
・何か別件があったのを忘れている恐れがあり、即答できない
・断りづらいお誘いが入ったら困るので、曖昧にできるならしておきたい
・気分が乗らない誘いでも、はっきり断ると相手を傷つけそうで面倒
・仕事で急用が入る可能性があり、ドタキャンなど迷惑をかけたくない

 さて、いかがでしょうか。これらをもとに、男性たち(我々自身を含む……)の約束事にまつわる意識を探っていきたいと思います。

視野狭窄(きょうさく)&「パブリック > プライベート」の傾向

 紹介した言い分を眺めてみると、そこにはいくつかの特徴が浮かび上がってきます。

 まずは「目先のことでいっぱいいっぱいになっている」という点です。目先のこととは多くの場合「仕事」を指すと思われますが、これにキャパシティーのほとんどを奪われていて、先のことが考えらない「視野狭窄」の状態にある……という背景がありそうです(これに関しては、「『後でちゃんとやる』が口ぐせ。多忙な”ジャグリング男子”との付き合い方」の中で紹介した「トンネリング」という問題が関与していると思うので、こちらも参考にしてみてください)。

 また、「パブリック>プライベート」という傾向も見て取れます。つまり、男性たちの予定は基本的に仕事ありきで、空いた時間に私用を入れることができる……という構造です。またこの原則は人間関係にも適用され、仕事相手や趣味の仲間、男友達といった「公的な関係」ほどスケジュール意識が高まり、家族や恋人、女友達といった「私的な関係」ほど対応が曖昧になると言えそうです。

 なぜ男友達がパブリックで女友達がプライベートなんだという疑問が生じるかもしれませんが、男の絆を意味する「ホモソーシャル」という言葉が示すように、男同士の集まりは私的な関係ではなく一つの「社会」と言えます。例えば男同士で飲んでいるとき、「彼女」や「嫁」を理由に早退する男に対してブーイングが飛ぶという話もよく聞きます。

 まあ、そんなややこしい話はさておき、男性たちは怒られることが大嫌いなので、「甘えが許されない相手とはちゃんと約束するが、甘えられそうな相手に対しては曖昧な態度を取りがち」とまとめることができそうです。