男性たちは「今の気分」というものに引きずられがち

 前ページで挙げたのは約束を決めたがらない男たちの基本原理であり、言わば無自覚な部分の話でしたが、自覚的に曖昧な態度を取っているケースもありそうです。

 「もっと行きたい予定が入るかもしれないから、なるべく保留にしておきたい」「選択肢をいくつか持っておいて、そのときの気分で決めたい」といった声に代表されるように、男性たちは「今の気分」というものに引きずられがちです。

 これには「決断ができない」という背景があるように思います。決断とは文字通り「何をするか自分で選択する」ことですが、同時に「他にあり得たかもしれない可能性を捨てる」ことも意味します。

 男性たちはこれが苦手で、それは恐らく「外から与えられたもの(仕事や課題)を打ち返す」ということばかりやってきていて、「自分で考え、自らの責任の下で行動・実行していく」という経験を積んでこなかった人に多い特徴だと思いますが、いずれにせよ、「自分はこれをする」という決断ができないから、生理的欲求や面倒臭さといったものに引きずられ、そのときの気分に基づいてしか決めることができない……そんな側面も指摘できそうです。

 余談ですが、男性からの「今から飲める?」「今夜空いてない?」という突発的な誘いに迷惑・困惑している女性たちの話「男の行動から“本音”を見抜くには──突然の電話、終電間際のメール……これってどういう意味?」に寄せられたような相談もよく聞きますが、これも「今の気分に引きずられる」という性質に由来するものだと思われます。

決められないからこそ曖昧な態度を取る

 さてここまで、予定を決めたがらない男性たちの声をもとに、そこに見られるスケジューリング意識について考察してきました(我々自身にも大いに当てはまるところがあり、書いていておなかが痛くなりました……)。

 このように考えていくと、相談文にあった〈約束事って、基本的には先約優先だと思うんですけど、男の人は違うの?〉に対しては、「決められないからこそ男性たちは曖昧な態度を取る」というのが回答になります。

 彼らにとってゆうこさんは「プライベート」の領域に属していて、甘えが許される存在だと見られているかもしれません。

 また、キャパシティーのほとんどが仕事で占められていて、先のことを考える余裕がなくなっている状態にありそうです。そして、これまでの人生で決断力を養うための経験をあまり積んでおらず、この先も「今の気分」に引きずられた選択をし続けていく可能性も高い──。

 仲が良くなるほど甘えが生じる側面もあり、必ずしも「優先順位が低いからゆうこさんに対して曖昧な対応をしている」というわけではないと思いますが、少なくとも彼らが上記のような性質を持った男性であるという自覚は持っておいたほうがよさそうです。