人の恋愛を浴びるように聞くこと

 前ページで見たように、週3ドリーマーだった当時の清田にとって、失恋ホストは元カノとの恋愛に改めて向き合う場として機能していました。ポイントは、人の恋愛や失恋の話を浴びるように聞くというところにあります。このポイントに焦点を当てれば、失恋ホストは、例えば「友達の恋愛の愚痴を積極的に聞くこと」や「ビターな恋愛映画(ブルーバレンタインとか…)を観ること」など、色々なことに置き換え可能です。

理想化を防ぐという効用

 また、浴びるように恋愛の話を聞くことの効用は、自分の失恋に向き合える点だけではありません。元の恋人やその人との恋愛の理想化を防ぐこともできます。

 これは振られてしまった場合に起こりがちなのですが、失恋して時間が経つにつれ、元の恋人や、その人と過ごした時間の理想化が進むことがあります。実際に付き合っていた時には、相手の言動で嫌な気分にさせられることや、どうしても合わない部分にうんざりすることもあったはずなのに、そういう「見たくない部分」は脳内編集によって知らない間にカットされ、「見たい部分」だけをつなぎ合わせたスイートな物語が再生されるのです。

 ご多分に洩れず、清田もくだんの彼女との恋愛を理想化していたのですが、失恋ホストで相談者さんたちのリアルな恋バナを聞くなかで、脳内編集でカットしていた「見たくない部分」がリプレイされたそうです。例えば、一緒に映画に行っても彼女は感想を言わないから物足りなく思っていたとか、服装の好みが全く合わなかったとか、どこか不機嫌そうにしていることが多い彼女にいつもビクビクしていたとか、諸々のビターなディテールを思い出したのです。

ポジティブイメージのリピート

 奈美さんは元カレのことを「あんなに優しくて楽しい人は他にいない」と書いていますが、これは明らかに理想化です。理想化された元カレワールドでは、元カレのポジティブイメージだけがひたすらリピートされるため、No.1の座が他の誰かに交代することはありえません。週3ドリーマーだった当時の清田は、パソコンに保存した彼女の写真を時々見返していましたが、見るのは決まって3枚のベストショットだけでした。同じようなことが、奈美さんの内面でも起こっているのではないでしょうか。

 次のページでは、このような理想化を防ぎつつ失恋から立ち直るために最適な、恋愛の話を浴びるように聞くことができる具体的なツールを紹介します。