ノートに描かれたイラストやキャッチコピーがそのまま商品になりました
ノートに描かれたイラストやキャッチコピーがそのまま商品になりました

 「鉛筆で下絵をノートに描き、それをパソコンに取り込んで調整したんです」と渡辺さんが話す通り、ノートに描かれたイラストやキャッチコピーがそのまま商品になっています。さらに、ノートにはミシン目が入っているので、切り取りやすくスキャンやコピーがしやすいのも、このノートの気に入っているところだとか。

 また、一つの商品が出来上がるまでには、営業や工場など、他部署との打ち合わせも欠かせません。プロジェクトの進捗具合などもすべてノート1冊で管理していたそうです。

 「すべてこのノートにメモを取っているので、『あれはどこに書いたっけ……』と探すことがありません。前回の打ち合わせ内容もすぐに振り返ることができるので便利です」

時にはノートがタスクリストにも
時にはノートがタスクリストにも
【ルール】
ノート1冊にすべての情報をまとめる


3. イラストもキャッチコピーも、素案はノートに手書きで

 「今はイラストもデジタルで描く方が増えていますが、私はアナログ派なんです」と渡辺さん。「手描きのほうが、発想が膨らむ気がするんですよね」

 イラストもキャッチコピーも、素案はまずノートに書くのだそうです。

 「たくさん案を出していくときに、パソコンは古いものにどんどん上書きしていきますよね。でも、『前の案のほうがよかったな』と思うこともあって。ノートだと、書いたものの上に赤字で訂正をしていくので、前の案も残るんです。すべての案を見渡せるのが便利ですし、自分の考えてきたプロセスをたどることができるのも面白いです」

ロゴマークのラフスケッチ。イラストは鉛筆で描くことが多い
ロゴマークのラフスケッチ。イラストは鉛筆で描くことが多い

 新商品のイメージを膨らませるために、切り抜きなどをスクラップをすることもあるそうです。「自分の使いやすいようにレイアウトを工夫できることも無地ノートならではの魅力ですね。イラストに表にスクラップに……何でも描くことができますから。デジタルの時代に、あえてアナログのノートを使うのってぜいたくだなぁと思います」

【ルール】
アイデアを出すときは自分の手を動かす


4. 過去のノートを振り返り、新たな仕事のヒントにする

 2カ月に1冊ほどのペースでノートを使うという渡辺さん。これまでのノートはすべて取ってあります。

 「入社してからずっと使っているので、デスクやロッカーはノートでいっぱいです。ノートを見返すのも好きですよ。以前と似た商品開発に携わっている時は、昔のノートを開いてヒントを探すこともあります。時には『こんなことでつまずいていたんだ』と気付いて、『少しは成長したなぁ』と昔の自分に励まされることもあります」

ノートを見て、携わった仕事を振り返る渡辺さん
ノートを見て、携わった仕事を振り返る渡辺さん

 ノートにバインダーにとさまざまな商品に関わる渡辺さんですが、商品別にノートを分けることはせず、時系列で1冊にまとめるようにしているそうです。

 「プロジェクトによってノートを使う量が変わりますし、時系列のほうが『この時期はこういう仕事をしていたな』とよく思い出せるような気がします」

 それにしても、どのページも奇麗に書かれていますね。

 「文字もデザインの一つだと思っているんです。読み返すことが多いので、自分のためにもできるだけ丁寧に書くように心掛けています」

ケイ線がないと文字を真っすぐに書くのが難しそうですが、慣れると奇麗に書けるようになるとのこと
ケイ線がないと文字を真っすぐに書くのが難しそうですが、慣れると奇麗に書けるようになるとのこと
【ルール】
ノートをこまめに振り返り、今の仕事に生かす


 ノートはケイ線がないと使いづらいのでは……と思いがちですが、文字もイラストも表も書くことができ、レイアウトも都度自由に決められる無地のノートはかなり便利なように感じました。思いもよらないアイデアが浮かんできそうです。

文/藪内久美子 写真/清水知恵子