「プレゼン資料や販促ツールなどを作ることが多いので、その下書きが多いですね。打ち合わせの場でパパッと描いたものもあれば、一人でじっくり考えて描いたものもあります。資料が出来上がったらもう下書きは必要ありませんから、『捨ててもいいや』という気軽な感覚で使っているノートです」

方眼紙なので、図を細かく描くことができます
方眼紙なので、図を細かく描くことができます

 「たくさんの人が関わる資料を作るときは、打ち合わせの場でノートの下書きを見ながらメンバーの認識を擦り合わせていくことが多いです。私たちの会社はデザイナーが多いのですが、彼らはよくホワイトボードにアイデアを描いています。一人デスクでアイデアをつめていくよりも、『皆でアイデアを出し合って決めていこう』という風潮が会社にあるのだと思います。そういう周りの影響を受けて、今のノートの使い方があるのかもしれないですね」

 図だけでなく、企画の素案などのアイデアを書き出すこともあるとのこと。書くペースはちょうど1年で1冊使い終えるくらい。日々、アイデアの源となっているノートなのですね。

【ルール】
ノートを使って、アイデアをすぐ形にする


3. 何度も読み返す「本棚に置いておきたい」大きいノート

 続いて、大きなノートについて聞いてみましょう。分厚い表紙で、顔よりも大きなA4サイズ。ノートというよりハードカバーの本のようです。「まさに、『本棚に置いておきたくなるようなノートを』と思って選んだんですよ」と稲村さん。

 こちらにはどのようなことを書いているのでしょうか? 見せていただいたページには、打ち合わせの内容が書かれていました。

 「CSVは何年もかかる長期的なプロジェクトが多いので、その記録を残しておくためのノートです。日本の伝統工芸を後世へ伝えるプロジェクトに関わっているのですが、これはその打ち合わせメモですね。職人さんたちとの打ち合わせだったのですが、職人の方々にじっくりお話を伺えるとても貴重な機会でした。ですから、今後のプロジェクトのために重要な内容がたくさん出てくるだろうと思い、ささいなこともたくさんメモしてあります」

打ち合わせのメモは、ほぼ1行おきで見やすいように、シンプルに書かれています
打ち合わせのメモは、ほぼ1行おきで見やすいように、シンプルに書かれています

 「こちらのノートはもう3年ほど使っていますが、まだ3分の1も進んでいませんね。もしかすると、1冊使い終えるまでに10年くらいかかるかもしれません」

 重量感がありサイズも大きいので、こちらは長期的なプロジェクトに関わる時にのみ持ち出しているとのこと。ただ、読み返す頻度は高いそうです。

 「貴重なインタビューや仕事の進め方など、読み返して学びになりそうなことはこちらにまとめています。こちらのノートは持ってこなかった、というときには、小さいノートでメモを取ってそれを書き写すこともありますよ」

 また、配布された会議資料を転記することもあるそう。あえて自分の手で書き写すことで、より学びになるのですね。1冊使い終えるのが楽しみになりそうな立派なノートでした。

【ルール】
何度も読み返したい内容は、普段使いとは別のノートにまとめる


大きいノートを見返して、笑顔になる稲村さん
大きいノートを見返して、笑顔になる稲村さん

4. スケジュールはデジタル管理、その他はノートや付箋を活用

 「スケジュールはすべてデジタル管理ですが、タスクリストはアナログで作っています」と稲村さん。携帯用の小さなノートの表紙裏に、付箋で1週間分のタスクリストを書き出しています。

タスクは1週間ごとに更新しています
タスクは1週間ごとに更新しています

 また、デジタルの時代にアナログなノートを使うよさについて、こう話してくれました。「いろいろな部署の方と関わる仕事で、取材や打ち合わせの機会が多いので、皆の意見をまとめるのにはやっぱりノートが便利です。その場でサッと書いて、気軽に共有できるのは紙のよさですよね。これからも2冊使いを続けていくつもりです」

【ルール】
内容によってアナログとデジタルを使い分け、アナログのよさを活用する


 自分にフィットしたノートを探し続けて、「2冊使い」にたどり着いた稲村さん。仕事の内容や用途ごとに、思い切ってノートを分けてしまうというのもありですね。もしかすると、ぐっと便利になるかもしれません。

聞き手・文/藪内久美子 写真/清水知恵子