「ああおいしい」と思える汁飯香

 日本には3000年の稲作の歴史があり、味噌には1200年の歴史がある。稲作は日本の文化を豊かにし、暮らしの中心となってきました。味噌は「アスペルギルス・オリゼ」という、日本だけにあるこうじ菌から造られる調味料です。そうした伝統的なものを信じたらいいのではないでしょうか。

 食と健康の世界では、どんどん新しい情報が出てきますが、しばらくたつとその知見は間違っていたとか、その薬は駄目だったという話が出てくる。一方で、20年前は栄養評価などなかったナスやタケノコといった食材が、実は体にいいというようなことをいわれるようになる。こうした手のひら返しはしょっちゅう起こっています。

 新しい食と健康の情報というものは、経済と関わるところが大きい。企業がPRのために情報を発信することもあります。そうした世の中で、自分が何を信じるか。それが大切なのです。

 朝日が昇る、夕日が沈む光景に人が感動する。自然と交わるところにはおのずと湧き出るような感動があります。果たして人工的なものにそこまで人を幸せにしてくれるものがあるでしょうか。何を食べるべきかは、自分の想像力を働かせて考えなくてはいけません。

 汁飯香は飽きない。ずっと続けられる食事です。朝食にもなり夕食にもなる。自然物であるから飽きない。毎日食べても、「ああおいしい」と言える食べ物なのです。

 味噌汁は塩分の取り過ぎだという人がいまだにいますが、それは時代遅れの考え方です。味噌には強い利尿作用があり、必要量以外の塩は体外に排出されるのです。味噌が血圧を上げて健康を害するということもいわれましたが、実は血圧を安定させる働きを持つということも最近分かってきました。

 味噌は、桃の花が咲く春に仕込んで、夏の暑い時期を常温で越し、12月になるとようやくいい匂いがしてきます。それだけ保管しておかなければいけないということはコストがかかるわけです。値段が安い味噌は、1日でも早く出荷するために、まだ味噌とはいえない状態で出荷する。調味料を添加して出荷するわけです。それは「自然物」といえるのでしょうか。選ぶときは、伝統的な製法で造られた味噌を選ぶという想像力を持ってほしいと思います。