チェック項目・その2 血糖

痩せている人でも隠れ高血糖の可能性が

 次に気を付けたいのは血糖値。妊娠すると、胎盤から分泌されるホルモンの影響で血糖値が上がりやすくなる。その影響で、妊娠中、血糖の調整がうまくいかなくなり「妊娠糖尿病」になってしまうことがある。これは一般の糖尿病とは違い、出産後はまた元の血糖値に戻る。ただし、「妊娠糖尿病になった人は、年を重ねると本物の糖尿病になるリスクが7.4倍ほど高くなるので、妊娠後もきちんと血糖を管理したほうがいい」(荒田さん)。

 また、「妊娠前から糖尿病を発症していたのに発見されず、妊娠して初めて病気が判明するケースも少なくない」(荒田さん)という。

 妊娠中に血糖のコントロールが悪いと何が心配なのか。「高血糖だと妊娠高血圧や妊娠高血圧腎症を併発しやすく、一方で、在胎期間の標準値に比べて出生体重が大きな赤ちゃんになったり、4000g以上の巨大児になりやすいので、出産時に難産になったり出血が多くなるなどのリスクが上がります」(荒田さん)。そして帝王切開の確率も上がってしまう。また、本当の糖尿病の場合は、これらの発症頻度が高くなるため、より厳重な管理が必要になる。

 心配なのは母体だけではない。「妊娠前に高血糖状態が続くと、流産や先天異常が多くなることも分かっています」(荒田さん)。

空腹時血糖が100mg/dl以上は詳しい検査を

 では、妊娠希望者が基準にすべき数値はどのくらいだろうか? 荒田さんによると、「空腹時に測る血糖値が100mg/dl以上109mg/dl未満、またはHbA1cが5.6~5.9%の間で、かつ、糖尿病の家族がいる、BMIが高い、運動習慣がない場合は妊娠糖尿病の発症リスクが高い」そう。

 ちなみに、100mg/dl以上109mg/dl未満は、一般的に「正常高値」と判定され、要経過観察といわれる値だ。

 条件に当てはまる人は、妊娠に向けて食生活を見直し、適度な運動を心掛けたい。さらに内科で糖負荷試験を受け、より正確な血糖値を調べておくと安心だ。

 知っておきたいのは、日本人は痩せていても糖尿病を発症する人が多いということ。

「妊娠糖尿病の疑いで受診する妊婦の3分の2は太っていません。問診で食生活を調べると『時間に関係なく、おなかがすいた時だけ食べる』『食べるものは炭水化物ばかり』という人が多い。体重に表れていなくても、食事の内容や食べ方が乱れていて血糖コントロールがうまくいっていないケースが増えています」(荒田さん)。短時間睡眠だと糖尿病になりやすいことも分かっているので、睡眠時間の確保も意識したい。

 「太っていないから糖尿病は心配ない」との思い込みは禁物なのだ。

●妊活中の人は以下の数値でも「要注意」
空腹時血糖が100mg/dl以上109mg/dl未満、またはHbA1cが5.6~5.9%