脂質の取り過ぎ、ストレス、歯周病にも注意

――急激な肥満、妊娠糖尿病、抗菌薬。これら3大要因以外にも気を付けるべき要因はありますか。

永田さん 肥満と関連しますが、肉や脂肪の多い欧米型の食事に傾くことは、腸内細菌叢のバランスを崩す要因となることが分かっています。

 また、ストレスで腸内細菌叢のバランスが崩れる、という研究報告も多い。例えば、宇宙飛行士の腸内細菌叢が変わるということはNASAが証明していますが、これは「宇宙空間に行ったから」というより、緊張や訓練・作業によるストレスによるものであろう、というのが現時点での結論です。

 動物実験で母体マウスにストレスをかけ、子どもを産ませると、子どものマウスの腸内細菌叢のビフィズス菌、乳酸菌が減少します。なぜなら、ストレスホルモンであるコルチゾールが副腎皮質から産生されると、このホルモンとくっつく鍵穴(受容体)を持つ大腸菌が腸内で多く増殖するのです。有用菌とされるビフィズス菌や乳酸菌は、コルチゾールがくっつく鍵穴を持っていません。

 妊娠を望む世代の多くは仕事をしており、厳しい労働環境の中でストレスと戦いながら生きる世代でもあります。ストレスを軽減するのは、現実的には簡単ではありません。ただ、「脳腸相関」という言葉があるように、脳と腸は深く関係し合っており、ストレスは明らかに腸内細菌叢に変化をもたらす、ということは知った上で、多くを抱え込み過ぎないように、自分をケアしてほしいのです。それは、今後始まる子育ての中でも同様に大切なことです。

 また前回、歯周病菌がお母さんの口から赤ちゃんに伝わる、という話をしましたが、少量なら心配し過ぎることはありません。しかし量が増えると、歯周病菌は母体にも赤ちゃんにも悪影響を与えます。妊娠前からしっかり口腔ケアをし、必要に応じて治療を受けておくことが、赤ちゃんの健康にもつながります。

赤ちゃんの健康のために、気を付けましょう イラスト/もり谷ゆみ
赤ちゃんの健康のために、気を付けましょう イラスト/もり谷ゆみ