「家事代行を利用する最初の一歩」の難しさを実感

 会社員時代、プロジェクトマネジャーとしてクラウドサービスの立ち上げなどを担当してきた和田さん。0から1を作る仕事をしてきた経験から、起業後も多くの課題が発生することは当然だと捉えていたので、「苦労したという思い出はあまり残っていない」といいます。

 「ただ、今でこそ多くの方が『タスカジ』を利用してくださっていますが、最初はそれほど利用者が増えず、女性にとって『家事代行を利用する最初の一歩』を踏み出すことが、とても難しいことなんだなと実感しました。

 サービスを世の中に広めることは、『家事は女性や母親がするもの』という固定観念を変えることでもあります。もともと『ハードルは高いだろうな』と予想はしていたのですが、思っていた以上にそのハードルは高いと感じました」

会社員時代、「自分のパフォーマンスは市場やお客さんから評価されたい」と思っていた和田さん。仕事への評価や価値が、レビューでわかるタスカジの仕組みは、この気持ちがベースになっている 写真/清水千恵子
会社員時代、「自分のパフォーマンスは市場やお客さんから評価されたい」と思っていた和田さん。仕事への評価や価値が、レビューでわかるタスカジの仕組みは、この気持ちがベースになっている 写真/清水千恵子

 家事代行を利用することに対して、多くの女性は罪悪感を抱きがち。「自分以外の女性もみんなやっていることだから……」と、限界まで頑張っている人も多いはずです。

 その他にも、周囲の目やセキュリティーに関する不安、子どもへの影響、時には夫の説得など、抱えている事情は人それぞれですが、女性が越えなければいけない壁は想像以上に高かったそうです。

 ではこうしたハードルを、和田さんはどうやって乗り越え、「タスカジ」を世の中に広めていったのでしょうか。

 「最初は、自分のブログやFacebookで、地道にサービスの告知や紹介を行っていました。すると、今度はそれが講演の依頼などに結び付き、さらにメディアの目に留まったことで、多くの人に知ってもらえるようになりました。

 特に、メディアのパワーと結び付いた影響は大きく、タスカジの理念や事業内容に共感してくれた各メディアが、『家事代行を使ってもいいじゃない!』というメッセージを社会に向けて発信してくれたことで、『家事代行を利用する』という新しい文化を一緒につくっていけたと感じています」