有働さんの立ち位置が働く女性に与えた夢

 番組出演者として、そしてNHKアナとして、「あさイチ」の進行の手綱を握っていたのは有働さん。数々の言動からうかがうに、その舞台で最も重要な人物でありながら最も番組を楽しんでいたのも有働さんではないかと思うのです。自身も子育てパパとしての実体験から柔軟で優しくて公平な視線を持つイノッチ、NHKならではの正統な報道人材らしい、どっしりとした安定感で番組の重低音リズムをキープするヤナギーという、最高のチームメートに恵まれて。

見ていて羨ましかったんです。あのチームワークが…  (C) PIXTA
見ていて羨ましかったんです。あのチームワークが…  (C) PIXTA

 有働さんってば、木村拓哉さんのプレミアムトーク出演回で「あまりこっちに体を傾けないでください」と大照れしたり、高橋一生さんの出演回で「好きなタイプは物静かな人」と言われてすぐに黙ってみたり、先日の瀬戸内寂聴さんの回では大人の女性の恋愛トークでつい熱をもって突っ込んだり。ワキ汗を見せる女性は見苦しいとの意見に反論したり、帯番組継続中に実母を亡くしてもまた立派に復帰してみせたり、自身の不妊治療を告白したり、「粗相」失言で全国から突っ込まれたり。

 ユーモラスなキャラが確立した有働さんの姿からついうっかり忘れがちですが、よくよく思い出せば有働さんは、超エリートキャリアウーマン。

 主婦向けの朝の情報番組を引き受けるときも、「独身で結婚も子育ても経験のない自分では通用しないんじゃないか、番組には生放送中に視聴者の方からFAXやメールが届きますが、その内容も主婦経験のない私がきちんと受け止められるのか、不安でした」と振り返っています。

 有働さんの姿はとても正直で、私たちとおんなじで、人間臭くて。だから信頼も厚く、素晴らしい番組チームを率いてこられたのかもしれません。その姿を毎朝見て「今日も頑張ろう」と思えた女性ファンは、たくさんいたのです。

 有働さんの今後のキャリアについて、いろいろな憶測も飛び交います。何度もフリーになることを検討しているとか、いやいや、既に天下のNHK東京アナウンス室では管理職でド正統な出世街道の上なんだからこのまま順当に、とか。でもたとえどちらに転んでも視聴者はこのまま温かく支持するのではないかと思えるのは、有働姐さんが8年に及ぶ「あさイチ」の仕事を通して築き上げた「国民的アナ」の人徳故でしょう。