一度も働いたことのない、子育てしかしたことのない専業主婦って、「真剣に働いている」キャリアウーマンから、そんなに忌み嫌われるものなのか。そんなに話もしたくないほど、価値のないものなのか。

「働いたことのない専業主婦」ってそんなに忌み嫌われるものなのか 写真はイメージ (C)PIXTA

 もちろん私の事情をつまびらかに話したわけではありませんから、彼女自身が個人的に持つ「働いたことのない専業主婦」へのイメージや強い感情が噴き出したのだと思いますが、私はそこで、専業主婦としての自分自身のコンプレックスをそれはそれは深ーく掘り込むことになります。

 社会から価値のない存在として扱われることは、誰であれ、ひどくつらいものです。だから専業主婦をひとくくりにして「寄生虫」とまで罵倒するようなSNSの激しい論調を見ると、その当人が女性であれ男性であれ、思慮のなさと、むしろ必死さだけが強く印象付けられます。そして思います。「そこまで専業主婦を憎むのには、この人の中にきっと何か原因があるのだろう」。

女たちが専業主婦を恐れない社会もある

 思い込みの強い私は、その一件以来「専業主婦でいてはいけない」との焦燥感だけに駆られるのですが、情けないことに試験には落ち、すがる思いで予備校と学習塾の講師となって、ようやく自己肯定感的に一息つくのです。

 ちょうど子育てがとても面白かったこともあり、教育や子育ての分野を専門としたライター業も始め、その後講師業を辞めてライター業1本に絞ったのは、第2子を出産することになったからでした。

 ライター業で雑誌やテレビ・ラジオなどのさまざまなメディアに出していただくようにもなって拡大しかけていた時、また私に「扶養内専業主婦」の時代がやって来ます。

 それは、上の子どもの中学受験と下の子どもの幼稚園受験が重なり、さらにその半年後、夫の海外赴任に帯同して欧州へと渡ることになったためです。でも結婚から12年たっていろいろな女性の生き方を見聞きし、自分の人生を自分でハンドルする自信もつき始めていた私は、積極的な選択として扶養内主婦を選んだように思います。

 まず渡ったスイスの生活は、初めてのことばかりでした。世界各国から国際機関に送り込まれた金融政策エリートの妻たちが、日中は子どもをインターナショナルスクールへ通わせ、自分たちはその国際機関が持っているスポーツクラブに集い、スポーツと美食と社交に花を咲かせる。スイスでは、その家族は外交官待遇です。

 何かの拍子にたまたまそんなきらびやかな世界へ送り込まれてしまった、一介のサラリーマン家庭であるわが家。その様子を面白おかしく原稿にして月に1~2本日本へ送る、細々とした執筆生活をする以外、専業主婦として生活していた私は、インターナショナルスクールの日本人代表を務めます。行事の準備やら、学校のお手伝いやら、読書会や講演会やら、他の各国代表のお母さんたちと毎日「プチ国連」状態で過ごしていました。