ジジたちに日本の景色を変えて欲しい

 バブル崩壊から人生を始めたような下の世代からは、先行きの不安感から「老害」「逃げ切り世代」と揶揄(やゆ)されることも多いジジ世代ではありますが、戦後日本の消費を牽引し、ファッションや文化といった側面で「趣味の良さとは何か」の学習結果をメディアや雑誌文化という形で蓄積してくれたのは、本当に大きな貢献です。それは、あの世代だからこそできたことです。

 そう考えると、ジジ世代が元気なのは悪くないと思えてきました。「LEON」もなんだかんだ言って、日本のオヤジたちが小ぎれいになり、良いもの・おいしいもの・そして良い人間力を熱心に研究するようになって、日本の景色をちょっと変えてくれたのではなかったでしょうか。

 以前、欧州に住んでいるときに、海の向こうから日本人を客観的に見ていて不思議に思っていたことがありました。日本人はアジア系の肉体的・性格的特質を享受しているので、若いときは割とセンシャスで繊細で魅力的なのに、ある一定の年齢から一気に「おっさん・おばさん」化するのはどうしてなのか。

 それはたぶん、社会全体が「いい年して(欲望が)みなぎっているのははしたない」という文化で、フェロモンを嫌う文化だからじゃないのかなぁ、と身近なフランス人やイタリア人がどんなおじいさんおばあさんになってもパートナー同士腰に手を回して歩いたりワイングラスを傾けたりしているのを見ながら感じていました。

 欲望とはすなわち生きる力ですから、多少欲望はみなぎっていないと、やはり生き物としては衰えるのです。何よりも、世の中の景色がどんよりしてしまいます。

 「LEON」の誕生で、日本のオヤジがなぜかイタリア男を手本にみなぎる気になってくれたおかげで、日本のオヤジたちの風景が変わった気もします。それに呼応するようにして、おばさんも変わったのではなかったのでしょうか。美魔女だとか何だとかで、「見苦しい」などいろいろ言われるけれど、今後は人生100年の時代へ突入です。ちゃんと欲望(生きたいと思う力やハリ)を衰えさせずにメンテナンスしなければ、ひどく早くからしぼんでしまいます。それに、肉体年齢を永らえさせるという発想は、健康面からも支持されますよね。

 だからシルバー……もとい、ゴールデンジェネレーションの皆さんには「みなぎっていただいて結構」なのです。そして個人的に願わくば、若い女にチャラチャラ手を出すよりも、同年代でくっついていたわって、「こういうカップルになりたい」と下の世代が目指せる姿を見せてほしいなあと思います。今どき、女性活躍推進とか働き方改革とかワークライフバランスとかで、若い子は若い子で忙しいんですよ……(笑)。