そう、つまり「おっさん」と「ネットを知らず、使わず、発言しようと思わなかった女性」は、ネット上に長く不在だったのです。あるレベル以上の社会的ポジションがあったり、家庭を持っていたりして「守るもの」がある故にネットから離れ、ネットに疎く、ネットでは発言のすべを持たなかった中高年男性。そして携帯文化には親しんでいてもPCを持たないなどによりネット文化にアクセスしていなかった女性。ブログやSNSが登場する前のことです。

 その時代の「弱者のメディア」で育ち、活発に「ネット的態度と物言い」を身に付けた世代が今や30代や40代となって、社会の風潮の舵を握れるようになった。その結果が、具体性のないイメージや掛け声としての「おっさんバッシング」(30~40代も十分に「おっさん」世代なのですが……)と「女子のほうが優秀」なのではないかと、私は思います。

弱者のメディアで育った世代が今、世論を大きく動かすようになった(C)PIXTA
弱者のメディアで育った世代が今、世論を大きく動かすようになった(C)PIXTA

 ネット社会が実際の社会を完全に侵食した現代では、ネットで声が大きい人たちが論調をつくる構造がある。では誰の声が大きいのかをよく観察すると、風潮がつくり上げられる仕組みがよく見えてくるのです。

 そのときに忘れてはいけないのは、「それは新しい差別を生んでいるだけではないのか」「それは誰かのルサンチマン(恨みつらみ)によるリベンジではないのか」との、フラットに観察し自分を省みる態度ではないかと思います。ネットとは本来、社会をフラットにすることを期待された装置だったのですから。

文/河崎 環 写真/PIXTA