これが「輝く女性」です

 「女性も輝く社会」ーー。まるでその言葉を体現するかのような、素敵な女性を知っています。

 彼女は仕事に家庭に育児にと、毎日全方向からの要請に応え、しかもそれぞれの側面で一定のレベルを維持している、デキる女性。社内でも将来を嘱望され、彼女を喜んで支えてくれる上司や部下に恵まれ、優れたキャリアを継続しながら、結婚も出産もして幸せな家庭を築いた。クライアントや社内の人間関係も良好に維持し、子どものお迎えの時間を気にしながらも7時にはきっちりと業務を終了し、時には同じように多忙な夫にお迎えを頼んで残業もするなど、夫婦でバランス良く家事育児を担当しながら、決して仕事に穴を開けない。

 そのくせ、家庭も円満で、夫婦双方の実家との関係も良好。子どものお迎えや病気療養を姑にお願いするのもスムーズで、折を見て素敵な品を「おばあちゃんにプレゼント」とさりげなく渡し、感謝も忘れません。以前、親の介護の話になったときに「今は自分の仕事が忙しくて、子供達の面倒を両親にお願いすることが多いから、いずれ両親たちに助けが必要となったら、そのときは私が恩返しをする番かな……」と話してくれたことがあります。

 忙しいはずなのにいつも綺麗で、今朝も目立ちすぎず控えめすぎずの、シンプルで素敵なコートが決まっていた。ああ、あんな先輩になりたい……と憧れる後輩社員も続出、取引先のファンもたくさんいるような女性なのです。

 ……と、すみません私、いま大嘘をつきました! ごめんなさい。

そんなスーパーウーマン、いないって!

 そんな人、実在しません。見たこともありません。

 あ、いえいえ、似たようなのは一度見たことがあります。ドラマで。綺麗な綺麗な女優さんが、その役をやっていました。実生活では独身で、ファッション誌の表紙も、ゴシップ誌の記事も、たくさん飾るような演技派美女です。

 フィクションなんです、そんな輝く女の人。実在なんかしないんです。

 理由? 

 単純に、存在できないからです。あれもこれもドラマ並みに優れて正しく美しくこなすなんて、そんなスーパーウーマンはいないからです。人間には、みな平等に1日24時間しかないからです。