一億総お見合いおばさん化が起きている

 だから親切な人の多い日本では、「一億総お見合いおばさん化」が起こります。親戚や上司や同世代のみならず、結婚はいいものだと信じている既婚者たちは、独身の人を見ると心配になり、小さな親切(あるいは大きなお世話)を発揮するのです。

一億総お見合いおばさん化! (C)PIXTA
一億総お見合いおばさん化! (C)PIXTA

 今は、なんと国までがお見合いおばさん化しているご時世。「みなさん、結婚しましょう、産みましょう、育てましょう、夢を紡ぎましょう」との方針を明文化しています。「女性も輝け」は「働け産め育てろ介護しろ」という意味ではないか、と前回のコラム「一億総活躍社会が求める「輝く女性」にモヤっとする理由」で書きましたが、そんなことを国が奨励するのは、国が結婚はいいことだ、生産的だ、国益だと信じている前提があるからです。

お見合いおばさんをうまく利用して「生き延びよう」

 一方で、思想家の内田樹氏は、「結婚はリスクヘッジ、セーフティネットである」と説きます。

「結婚制度もそうです。貧しいとき、病めるとき、ひとりでは生活が成り立たないような苦境に陥ったときも、配偶者の支えがあればなんとか生き延びられる。そのためにパートナーがいる。それが結婚の第一の意味です」
「とにかく結婚は本質的には破局的事態に備えた安全保障契約なんです」

(内田樹『困難な結婚』/アルテスパブリッシング より引用)

 そう考えると、実はお見合いおばさんという人種は、本来恋愛下手、恋愛DNAを持たない日本人を結婚という社会的セーフティーネットに組み込み、より「生き延びさせる」ために、非常に有効に機能していたのではないでしょうか。