「死ね」という言葉の持つ、人の気持ちをえぐるような鋭さ、残酷さは、それが直接投げつけられたわけではないにせよ、傍で耳にする人の気持ちさえも傷つけ、消耗させるものです。

 そんな言葉が、「今年の流行語」としてトップテンに選ばれたことへの賛否が、噴き出しました。

「保育園落ちた日本死ね」新語・流行語トップテン入り

 「保育園落ちた日本死ね!!!」ーー。今年2月、強烈に鋭い切れ味を備えて、保活落選の失望と、なかなか解決されない待機児童問題への怒りを爆発させた匿名ブログが、日本を席巻しました。

保活落選の失望と、なかなか解決されない待機児童問題への怒りを爆発させた匿名ブログ 写真はイメージ(C)PIXTA

 私は当時、「プレジデントオンライン」の連載コラム(※参考サイト)で、「保育園落ちた日本死ね!!!」と叩きつけられるように打ち込まれた3つのエクスクラメーションマークに表れる、その激しい感情にこそ、書き手と同じ失望や憤激に心当たりのあった親たち、つまり保育園に落ちた過去の記憶や現在の怒りを持つ数万人が共鳴したのだ、とのコラムで書きました。

 国会前デモが敢行され、ツイッターでは「#保育園落ちたの私だ」とハッシュタグをつけて何千人もの当事者たる親たちの体験がツイートされ、change.orgでは約2万8000筆ものネット署名が集まりました。

 それを国会へと持っていき、「待機児童問題とは日本が直面する、現実的な喫緊の課題である」として世間に認知させるに至らしめたのは、民主党の山尾志桜里衆議院議員(42)。

 そのときも彼女個人のことを世間はあれこれ言いましたが、一人の若い母親のブログから、世間がここまで動いたという事実に、いま現実に子育てをしながら世の中に疑問を持つ親たちはどこか救われたような感情を持ったと思います。「声はいつか届くのだ、自分たちは世間に無視されずに済んだのだ」と。

 「保育園落ちた日本死ね」は、確かに「流行ったわけではない」。あの怒りは「流行」などではありません。

 右やら左やらの政治的な立ち位置以前の問題として、いま実際に手を動かし体を動かして汗をかき涙を流し、日々子供を育てることに追われ続ける親たちの実感だった。だからこそ、人々の心に深く広く染み渡ったことばとして、「2016ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンの一つに選ばれたのでしょう。