日本では結婚までもが「搾取の場」でいいの?

 「もしかして、従来型の日本人の結婚とは構造的な『性差のハラスメント』なんじゃないのか」とまで思わされたのは、ジャーナリスト白河桃子さんとエコノミスト是枝俊悟さんの共著「『逃げ恥』にみる結婚の経済学」。

 ドラマ化された海野つなみさんの漫画「逃げるは恥だが役に立つ」を、昭和から現代に至るまでの結婚を巡る社会通念を丹念になぞりながら詳細にひもとき、結婚の経済価値を数的に考察してみせた良本です。

 「(逃げ恥で算定された)主婦の給料19.4万円は高い? 安い?」「年収600万円未満の夫は専業主婦の妻に『好きの搾取』をしている」「夫の年収が300万円未満なら、専業主婦は『最低賃金』以下」「ワンオペ育児なら夫の年収は1250万円必要」と、次々と明らかにされる数字を見て、

 「なぜこんな、家庭内での労働力の搾取が『母・妻・女たるもの、かくあるべし』なんて言葉で当たり前にされてきたのだろう?」

と、がくぜんとしました。

 結婚と出産と「家庭に入る」が可能な限り同義とされ、結果として女性が働く機会を搾取され「離婚すると路頭に迷う」から飼い殺され、家族が機能不全となっていった、昭和末期型の結婚。それも悲惨ですが、今度は「女性も働くのが当たり前」として家事労働と女性の労働が雑に足し算され上乗せされただけの現代女性の現状に、日本の結婚は伝統的に「女性の人生の搾取装置」なの? と、屈折した見方をしたくなるくらい。

 そりゃ結婚や育児なんて女性のほうから願い下げだよね、なんて思ってしまうのです。日本の男女関係も、結婚という仕組みも、もちろん家庭のあり方も、日本人が男女ともに本当に幸せになりたいのなら、変わらなきゃいけません。

 日本の結婚は変わるべきだと言いました。その前提だと私たちがどこかで思ってしまっている「モテ」のあり方も、なんなら「モテる人間像」のあり方も、変わらなければいけません。

「モテ」と「かわいげ」、誰のためのもの? (C) PIXTA
「モテ」と「かわいげ」、誰のためのもの? (C) PIXTA

 弱いふりして「モテ」て搾取されるのが「かわいげ」なのか? そして「女子なんだから」「かわいく」あるべきって、誰が決めたのか? 誰のために「かわいく」あるのか? ここまで考えると、もはや「かわいい」にはなんか嫌な力学の傾斜さえ感じて、本当に褒め言葉なのだろうか? という疑問さえ浮かんできます。

 「かわいい」と人に褒められて自己覚知するような、他人の「かわいい」の褒め言葉のために生きるようなことにはNOを。そんなインディペンデントで若い「NO」の声が世界でも、日本でもちらほらと聞こえてきたのが、2017年の収穫かもしれませんね。

文/河崎環 写真/PIXTA