会社員として再出発。見つけた幸せの形とは?

――辞めると決めた途端、解放感に満ちあふれたと聡美さん。会社員に戻り、もう一度、再出発して人生を立て直すことにした。

聡美さん 35歳になっていましたが、転職活動を始めて、運よく正社員の仕事が見つかりました。SNSもつながりたくない人や宣伝ばかりする人は思い切ってブロックしたり、投稿を非表示にしたり。ログインする回数も減らしていきました。

 コーチとしての活動やSNS上の演出、必要のない付き合いをやめてみると、ものの見事にスッキリして心に余裕が持てました。もちろん収入も安定しました。

 ただ、正直言うと、辞めた当初は寂しさを抱えていたのも事実です。というのも、30代半ばになっていたので、学生時代の同級生はみんな子育てに必死で会ってくれる時間がなかったから。仕事でずば抜けた成功を収めるでもなく、子育てに奔走するわけでもなく、中途半端な自分の現実を直視するのはとてもつらいものでした。

 でも、隣には大好きな夫がいて、居心地のいい家があって、毎日元気に働ける健康な体と職場がある。「これからは今ある幸せを見つけて、大切な人やモノたちをもっと大事にしていこう!」と思ったんです。

――そう心に決めた瞬間、生活にも新しい変化が生まれていった。

聡美さん 体がすっかりなまっていたこともあって、趣味でマラソンを始めたんです。週2、3回ですが、2カ月ほど続けていくと自然と3キロ痩せて、ボディーラインもスッキリしてきました。気持ちも明るくなり、夫婦でこれからのことを話し合って妊活も始めたんです。

以前より楽しい時間が増えても、これ見よがしにSNSにアップしたりしません イラスト/PIXTA
以前より楽しい時間が増えても、これ見よがしにSNSにアップしたりしません イラスト/PIXTA

 夫と国内外の素敵な場所へ旅行に行ったり、おいしいお店でデートしたり。以前よりも楽しい時間が増えましたが、これ見よがしに夫婦デートの写真をSNSにアップしたりしません(笑)。アピールしなくても、既に十分に満たされているから。人からはささやかな幸せに見えるかもしれないけれど、そんな毎日こそ、今はいとおしく思えるのです。

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 さて次回は、愛情が強過ぎる母親と一線を引き、距離を置いたことで、仕事も家庭生活も好転した香菜さんのストーリーをお届けします。お楽しみに!

文/伯耆原良子 イラスト/PIXTA