職場のモヤモヤをプライベートで解消! 自分の「好き」が明確になった

――仕事をしていて最も気持ちをそがれたのが、上司の口から漏れる愚痴や文句の数々。聞かされるたびに、うんざりすることが増えていった。

沙織さん 部下に対して怒るといったことはないんですが、取材先が思うような反応をしなかったり、物事がスムーズにいかなかったりしたときに、独り言のようにぶつぶつ文句を言い続けるんです。かといって、自分で改善策を練るわけではなく、すべてが受け身の態度。なんだかここにずっといたら、自分までやる気を失って停滞していきそう……と思ってしまいました。

 毎日ルーティンの仕事ばかりなので、ある意味、楽ではありましたが、いまひとつ自分の力を発揮できていないことにモヤモヤ……。その鬱憤を晴らそうと、プライベートでは思い切り好きなことに取り組むことにしました。

 子どもの頃に好きだったバレエを再び習い始めたり、ピラティスのレッスンに通ったり。体を動かすとスッキリして元気になるんです。バレエやピラティスを組み合わせたストレッチを自分なりに編み出して、毎朝実践するようにしたら、体調も断然よくなり、ボディーラインも引き締まっていきました。

 やればやるほど楽しくなって、「やっぱり私は、美容と健康の分野が好きなんだなぁ」って、しみじみ感じましたね。

――好きなことに集中して取り組んでいると、沙織さんの中でこんな思いが芽生え始めた。

沙織さん いつか独立して、美容と健康に関する情報を発信したり、自分が実践しているストレッチやボディーケアを一般の人向けに教えたりできるようになりたい、と考え始めました。

 ただ、記者の経験は多少あるとはいえ、他の出版社やメディアとのコネクションもないですし、講師としての経験もありません。やってみたいけれど、自分にできるのかなぁ……と、しばらく悶々と過ごしていたんです。

夢をかなえるために選んだ「正社員」を手放す道

沙織さん そんな悩みや将来の夢を友人に語っていると、「そういえば、〇〇というWeb媒体で美容と健康に関する書き手を募集しているよ! チャレンジしてみたら?」と教えてもらいました。誰もが知る有名な媒体だったので、ここで自分のコーナーが持てたら、確実に独立への足掛かりになると思いました。でも、そのためには正社員というポジションを手放し、フリーになる必要がある……。悩みましたね。

 何が一番引っ掛かったのかというと、やはりお金の面です。30代半ばにしては収入もそこそこあって、ボーナスも年2回しっかり出ていたので経済的には困らなかったのですが、フリーになるとその収入が一切なくなります。パートナーはいたものの、入籍はしていなかったので、生活の面でも今後どうなるか分からない現状がありました。

 生活の保証も、もちろんうまくいく保証もありません。少しためらいましたが、やっぱりこのままの状態でいたくない、新しい扉を開きたいと思い、応募することにしたんです。

――採用担当者との面談の後、自身が書きたいテーマのサンプル記事の提出を求められた。その記事の情報の精度やクオリティーによって、合否を決めるというのだ。

沙織さん いきなりハードルの高い課題を出されてドキドキしましたね。会社ではプレスリリースや広報資料をまとめたり、与えられたテーマを取材したりして書けばよかったのですが、選考では自分でテーマを決めて、情報収集して書かなくてはなりません。でも、このチャンスを絶対つかみたいと思い、毎晩必死で情報を調べて、眠い目をこすりながら記事を作成。久々に仕事に全力を注ぎました(笑)。結果は……合格! その媒体で晴れて自分のコーナーを持てることになったんです。

 そうなると、社員として働きながら活動することは難しくなるため、会社を辞めてフリーになることを決意。上司に退職の意思を告げると案の定、あまりいい顔はされませんでしたが、もう毎日あの職場に通わなくていいと思うと、心は晴れ晴れとしていました。