学びが深まるほど「自分には無理だ」と行動を制限される

 将来起業したい、独立したい、フリーランスで働きたい、副業で自己実現したい、という希望があったとき、勉強好きな人は、まず「そのための学校」に通おうとします。独立のタネを見つけるためにMBAで勉強しよう、大学院に通おうというのもその一つです。もちろん何も情報がない状態で進むよりも、全体像を学べたほうが安心だというのも分かります。でも心当たりはありませんか? 学べば学ぶほど「自分にはこんなすごいことは無理だ」と思ってしまう、ということが。

 真面目で一生懸命な人ほど、どこまで学んでもきりがない底なし沼にはまってしまい、「私にもできる」ではなく「私にはそこまでできない」と萎縮してしまうのです。「自分はそこまでできないから、もっともっと学ばないと」と思い、さらに勉強をして深く追求するというループに入り、結局何も行動に移せず時間だけが過ぎていく、ということもあり得ます。

 実は、行動に移せない人は、自分の考えや行動が世に受け入れられず、傷つくのが怖いのです。怖いから知識武装するわけですが、今度は得た知識が邪魔をし「こんな中途半端な状態ではいけない」と、さらに行動を制限してしまいます。

 「じぶん商品化」は、アイデアを市場に問う作業なので痛みも伴います。商品開発に百発百中はあり得ません。しかし、受け入れられないのはあなたの存在全体ではなくて、あなたのアイデアの一部だけです。チャレンジしてダメダシされて失敗を経験にしたほうが、よっぽど成長があります。じぶん商品化 → 販売 → 失敗 → 改善を繰り返すには、勉強のし過ぎはかえって弊害となります。小さく試して反応を見て、世の中の流れを肌感覚で知っていき、自分「ならでは」の精度や判断軸を蓄積していきましょう。

「学校」で学べる情報は、既に過去の成功体験

 MBAをはじめとする経営の学校ではケーススタディーがあります。ケーススタディーとは、過去の企業の成功、失敗事例を分析し、強み・弱み・課題を抽出し、自分だったらどうするかを学ぶといったものです。経営者の状況を追体験し、意思決定能力を学ぶ上では欠かせないものではありますが、気を付けなければいけないのは、学べるのは過去の成功の追体験であるということです。5年先、どの業界がライバルとなっていくかも見えない、今の会社が何を売る会社になっているか分からないような世の中で、過去の成功体験を追うことが、必ずしも「じぶん商品化」に役立つとは言えないと私は思います。

 また、私は10年間大企業、中小企業、さまざまな規模・業種の方と取引をしてきましたが、小さく商いを繰り返して市場感覚を磨きながら商品開発をする「じぶん商品化」のやり方は、大企業で成功したやり方とは大きく違います。大企業でずっと頑張って出世しようとしている人や、ビジネスを大きくして上場を目指そう、と考える人には大変役立つMBAの知識ですが、自分の強みを生かしながら自由に働こうとしている私たちに直接役立つものだとは限らないのです。