先送りを封印し、今すぐ行動するために必要な第一歩とは

 「そうはいっても、いろいろ忙しくて……」と「頭では分かっているけれどなかなかできない」と思うかもしれません。今の仕事でもいっぱいいっぱいなのに、どうやって時間を捻出するのだ、という意見もあるでしょう。

 やりたいと思うことを先送りにしてしまう理由は、やりたいことを実現するための行動を、段階を踏んで記録していないからです。すべきことがぼんやりしていて、何をどうすればそこにつながるかをイメージし切れていないから。最初の一歩を進めることができないのです。

 では、どうすれば最初の一歩を踏み出すことができるでしょうか。

 私が今回勧める方法は、まず「教えようとする」ことから始めるというものです。やりたいこと、好きなことが既にある方はそれを教えればいいですし、もしまだやりたいこと、好きなことが明確ではないのなら、あなたが仕事上よく聞かれること、あなたになぜかいつも仕事が回ってきてしまうことを、誰にでも分かる形で誰かに教えようとしてみてください。なぜなら、教えようという意識でいると、自分に足りないことや、これから身に付けるべきことが明確化していくからです。自分がどのようにスキルを身に付けてきたかを棚卸しして、相手にきちんと分かってもらえるように言語化し、それを誰にでもできる形で標準化・体系化することもできます。体系化できれば、他の人に任せることができ、相手に喜ばれて自分もラクになりますよね。

 私も「教える」を仕事にしているので実感しているのですが、教わる人よりも教える人のほうが勉強になります。教えるというのは、自分がどのようにそのスキルを身に付けてきたかの棚卸しをし、相手にきちんと分かってもらえるように言語化し、それを誰にでもできる形で標準化する作業だからです。

 例えば今すぐできる方法として、自分の部署のスキルを他部署の人たちに教える機会をつくるのも効果的です。過去資料作成の部署にいた時、パワーポイントの知識を「パワポ寺子屋」として定期的に他部署の人に教える機会があったのですが、自分の部署なら「知っていて当然で教えるまでもない」と思っていたことを「へえー! そんなことができるんだ!」「仕事が速くなった!」と喜んでもらえてうれしかったし、価値があると感じ、自分が「専門バカ」になっていたことにも気付くことができました。

今回のまとめ

 今回のまとめは次のようなものです。

1.「老後のために」と「ちゃんとしたら」は思考停止を招く禁止ワード

2.今は会社で専門性を磨いてゆくゆくは独立や副業したい人でも、今から、小さく試して反応を見る「じぶん商品化」は必須

3.先送りしてしまう理由は、やりたいことを実現するための行動を、段階を踏んで記録していないから

4.自分の知識を誰かに教えることで体系化するところから始めよう

 「教えよう」の視点で物事を見ると、コミュニケーションの取り方も変わるし日々の仕事について楽しみも見いだせるようになります。営業で使われる言葉に、お客様と契約を締結することを指す「クロージング」があります。せっかくコツコツ続けているあなたの学びや経験は、今の環境ならクロージングし、市場でお金に換えることができるはずなのです。「老後」なんて言っていないで、ぜひ学びのクロージングに挑戦してみましょう。あなたの挑戦を応援しています!

人に教えてみることで、「先送り」を卒業しよう (C)PIXTA
人に教えてみることで、「先送り」を卒業しよう (C)PIXTA

文/池田千恵 イラスト/PIXTA