■メイクって、ただの実用ではないんです。

 笑いながら、何とも言えぬ複雑な気持ちになったのも事実。

 電車の中でメイクをしている女性を見かけると、“メイクをしなきゃいけないから(仕方なく)やっている”感がプンプンと漂ってきます。さっきの彼女もそうですが、メイクを楽しんでいる感は全く見受けられませんでした。でも、メイクって、そんなに後ろ向きな行為でしたっけ?

 私は職業柄、化粧品メーカーの方々にインタビューする機会があります。新商品発表会で開発担当者に直接お話しを聞くと、「この色を出すまでに何百の試作品を作った」「ツヤを出しながらカバー力をキープする機能を同時にかなえる方法」など、貴重なお話がわんさか。お話を伺ったあとに、その商品を使うと、キレイ度が増すというか、明らかに仕上がりの違いを感じます。

 私の友人にその話をしたところ、腹落ちする答えが返ってきました。

「それって、心のゆとりなんじゃない?」と。

「“何となく”とか“こんなもんか”という気持ちでメイクをしていると、本当にそれだけの扱いしかされないんだよね。歳を重ねれば重ねるほど、それは顕著に表れる。丁寧にラインをとってマスカラを塗っただけなのに、会社でもママ友にもホメられる。そうすると“もっとこうしよう”って思うもの」。

 そう。スキンケアやメイクに時間をかけるって、実はすごく大切なこと。私自身も経験があるのですが、「忙しくて……」「面倒だから」と肌のお手入れをさぼると、肌自身までもが一緒にサボりだすんですよね。手をかけた分だけ肌は答えてくれる、というのは本当のこと。だからこそ、使うアイテムには愛着を持ちたいですし、メイクをする時間も大切にして欲しい。

 化粧は身だしなみ、と言う人もいますが、身だしなみ以上のチカラをくれるのも化粧のできるワザ。自分を一回りも二回りもキレイに魅せてくれる“お道具”でもあるんです。下まつげにも丁寧に入れたアイラインやくるんと上向きになったまつげは、第一印象を素敵に見せてくれるものですよ。そう考えれば、チャチャッと済ませるなんて絶対しないハズ。

 電車でするようなメイクでは決してきれいになんか、なれませんよ。

文/長谷川真弓