「どうせかなわない」で思考を曇らせないための、図の描き方

 先日、雑誌の企画で、早起きにチャレンジしたい人を対象にした誌上カウンセリングを行いました。早起き生活を実現させたいという目的から始まったカウンセリングですが、最後は大きな、考えるだけでワクワクするような野望が見つかり、そのためには朝早く飛び起きてでも時間をつくりたい! という状態をつくることができ、私もとても楽しくやりがいのある時間を過ごしました。

 私は早起きしたい人、時間を有効に使いたい人、働き方を改革したい人にはまず、次の図を使って理想の時間割を描いてもらいます。「わあ! これが実現したら、ものすごくうれしいなあ!」と心から思えて、わくわくして思わず動き出したくなってしまうような一日の時間割を作ってみるのです。

 「改善思考」の考え方では、まず現状把握として、今の時間の使い方を描いてからどこを変えていくかを考えます。しかしそのやり方だと、現状に引っ張られてしまい、ぶっ飛んだ未来、本来はこうあるはずだ、という思考になることができないのです。そんな硬くなってしまっている発想力を軟らかくする訓練が、この図を描くことです。

理想の一日の時間割を描いてみましょう 画像提供/朝6時
理想の一日の時間割を描いてみましょう 画像提供/朝6時

 ここでのポイントは、「今の職場は9時~17時の勤務時間だから」といって、9時から17時まで仕事にする必要はないということです。「普段は9時~21時まで働いているけど、理想は9時~17時なんだよね」と考えるのではなく、これが実現できたら毎日最高だ! と思う時間割を作ることです。例えばそれが、朝の7時~10時までの3時間だけ働くというものでもかまいません。自由に、好きなようにイメージをまず膨らませるのです。

 しかし、「自由に」といっても人は習慣の奴隷ですから、最初はついついいつものスケジュールを入れてしまいます。例えば、今通勤に1時間かかっている人なら、通勤時間は当たり前のように1時間入れてしまう、といったように。「本当は通勤なんてばからしいと思っていて、家で快適な状況でリモートワークできたら最高!」と思っていても、つい今までのクセで通勤時間も入れてしまいます。

 ぶっ飛んだ考え、ワクワクする考えをしてください、と言われても、やはり急にそのような考えをすぐに浮かべることが難しいのは、日々の時間に忙殺されてしまっているからです。この図に、心からの理想をイメージして描くことにより、「さて、何をしたい?」「何も制限がないならどうする?」という思考に徐々に慣れるようになっていきます。自分自身の成長やライフステージの変化によって、理想とするスケジュールは変わってくるものなので、半年に1度、1年に1度など、定期的に描いてみることをおすすめします。

 この理想の時間割ですが、作成したからといって明日からすぐに実現できる! という類いのものではありません。しかし、「3時間だけ働く」が明日から実現できるわけではなくても、「3時間だけ働く」人が本当にいるのか、どうやって実現していったかを調べることなら今日からすぐできます。「実際は無理だ」と思ってしまう思考を、「理想の働き方の一部は、明日から始められるかもしれない」という思考に徐々に慣らしていく手段が、冒頭の時間割作成です。

他人に自分の人生の主導権を握らせないで

 私は、働き方改革の実践と早起きの習慣化には共通するものがあると考えています。早起きしたい人の悩みも、働き方を変えたいという人の悩みも、突き詰めると「自分主体でなく他人に自分の人生の主導権を握られているのが嫌だ」という意識が強いのです。やる気はあるのにいつも中途半端、何も進まずに焦る、考えるための時間をつくろうにも、夜は仕事や家事が忙しくてついつい寝る時間も遅くなり、ダラダラ過ごしてしまう。そんな自分を変えたい! というのが本質なのです。

 ですから、じぶん働き方改革に取り組むときも、「価値観の明確化」についてあらためて考えてみましょう。自分にとってどういう状態が最高なのか? 何のために働き方を改革するのか? という本質の部分を、忙しさに流されて見失っていると、改革を推し進めることができないのです。

 多くの人が今、一日の3分の2以上の時間を費やしているのが仕事です。そういう意味では、一日の大半を費やす仕事を改革する「じぶん働き方改革」は、「じぶん生き方改革」と言い換えることができるでしょう。本当は何をしたいの? を忙しさに流されて見失わないようにしていきましょう。