ある日突然、母親になった!?

 今私は、ラオスで3つの図書館を運営しています。これまでの人生、やりたいことだけ選んで進んできました。でも、自分はやりたいことをやってきているのだから、自分の利益だけを考えて生きてはいけないという思いがいつも心底にあります。それは難民キャンプで、戦争などに人生を翻弄されて、自分の意志通りには生きられない人たちをいっぱい見てきてから、自分のやりたいことをできる立場にいるだけでも本当にラッキーだと思うからです。それとやり始めたことは中途半端ではやめられず、人とも場所ともしつこく付き合うタチで、ここまでやってきました。

 時には、「こんなことやってみたいな」と思っていても、実現しないことってありますよね。それはきっと、時期が来ていないのだろうと思うんです。「たろうの図書館」も、太郎さんのお母様に肩を押されたときに、その時が来たんですよ。でも、時期が来ないからって、ただ待っていてはダメかなとも思います。努力していないと。努力をしたのに無駄になることもあるけれど、トライをやめたら実現もないと思います。

 人生は思わぬ方向へ進むもので、実は私、4年前から子育てをしているんです。「えっ! えっ!」と言っている間に、生まれて翌日の赤ちゃんを縁あって育てることになりました。そんなことにもラオス人は驚きません。義母は喜んですっ飛んできましたからね。

 親となり、自分の時間がますますなくなりましたが、楽しい毎日です。子どもにとっての本やお話の大切さを、息子相手に再確認する日々です。ただ、もう少し余裕が出てきたら、集めたモン族の民話や、今も作っている刺しゅうの絵本をなんとか本にして、モン族の民話を後世に残し、人々が利用できる形にもっていかないと、これまでやってきたことの責任が果たせないなと思っています。「実現しないのは時期が来てないから」とは言いつつも、そろそろ手を着け始めないと、もう動けなくなっちゃいますよね(笑)。

「やらなければいけないことが、まだまだあり過ぎるんです」
「やらなければいけないことが、まだまだあり過ぎるんです」

聞き手・文/金田妙 写真/稲垣純也

◆モン文化研究・図書館活動家 安井清子さんインタビュー
第1回 就活を辞めてラオスへ! 移住し図書館を設立した女性
第2回 組織は私に向かない―ラオスで図書館造りに夢中の日々
第3回 43歳の私に年下のラオス人がプロポーズ その結果…(この記事)