転機は、準備をしているとやって来る

 「優勝は日本、村瀬美幸」と呼ばれた時は、本当にうれしかったです! チーズの本場はヨーロッパで、アジアの日本なんて完全アウェーですから、私の優勝は、築地で寿司職人世界コンクールをやったら、フランス人が優勝しちゃったというほどの驚きだったんです(笑)。ライバルのヨーロッパ勢も笑顔で祝福してくれて、審査員の女性も「女性としてうれしい。よくやったわね」と自分のことのように喜んでくれました。

 振り返ってみると私は、興味をきっかけに、あの表彰台に立てたんですね。小さな興味も、どこかでつながってくるものなのだと思います。習い事に精を出していた頃、「そんなにお稽古事やって何になるの?」と人に言われたこともありました。「何になるかは分からないけれど、今これに興味があるからやっているの……」と思っていましたが、今になると、何一つ無駄ではなかったと思います。

村瀬さんは、ついに世界一のフロマジェになりました! 提供/村瀬美幸
村瀬さんは、ついに世界一のフロマジェになりました! 提供/村瀬美幸

 転職をしてきたことも同じです。CAでキャリアを積もうと思えばそれもできたと思いますが、ワインの講師に、チーズ専門店にと飛び込んでこなかったら、今の自分はないんですから。転機って、急に来るように見えて、実は準備しているときにふっと来るように感じています。今の状況が嫌だなと思っているだけでは、それはやって来ないのではないでしょうか。準備をしていれば、何かのタイミングでそれが来たときに、飛び込めるように思うんです。

 そして、辞めてしまった仕事も、そこで培ったことはやっぱり役に立つんです。CA時代に身に付けた、疲れても笑顔を絶やさないことや清潔感のある服装を保つこと、急な揺れに備えて使った道具は即座にしまうことなども、すべてチーズの大会で発揮されました(笑)。スピーチテストでも講師時代の経験が役に立ちましたし、チーズと合わせるものを提案するテストでも、ソムリエの経験が生かされました。