80歳になっても踊っていたい

 会社にいる日本からの駐在員の方々は、私の本業はダンスだと皆に言ってくれて、とてもうれしく思っています。お金を稼ぐという意味では、本業は会社の仕事なのでしょうが、人生で最後に残っていてほしいのはダンスですし、ダンスがなくなる生活は考えられませんから。でも今は、ダンスだけで食べていこうとは思っていないんです。

 日本に一時帰国した時には、ワークショップを開催して生徒さんたちにダンスを教えることもあります。しかし以前、もし日本で教室を経営していくとなると、そのためにスタジオを借り、ペイするためにはどれだけのお金をもらわなくてはいけなくて……と深く考えた時期があり、お金を稼ぐことだけを考え過ぎてしまうとそのうちガツガツして、何よりも好きなダンスが重荷になってしまう気がしたんです。そんなことになるくらいなら、ダンスとは別のもので生計を立て、そのお金をダンスにつぎ込んだほうがいいと思ったんですよ。もちろん、うまくバランスを取って教室を運営しているすてきなダンサーさんもたくさんいますが、私は不器用なので(笑)。

「インドではグル(師匠)に感謝を捧げる『グルプールニマー』という日があり、私も姉妹弟子たちと共に師匠のご自宅(グルクル)に集まり、神様へのお祈りとグル(師匠)への感謝を捧げました」
「インドではグル(師匠)に感謝を捧げる『グルプールニマー』という日があり、私も姉妹弟子たちと共に師匠のご自宅(グルクル)に集まり、神様へのお祈りとグル(師匠)への感謝を捧げました」

 インドで古典舞踊カタックを学び始めて丸7年。インド人のお客様を前に踊ることも増えました。現在師事している師匠に代わってからは、ショーを見にいらっしゃる観客も古典舞踊や古典音楽の知識が豊富で見る目が肥えており、踊りの型や盛り上がる箇所を知っている方ばかり。そんな方々に「よかったよ」と声を掛けていただくと、本当にうれしくて幸せな気持ちになります。

「外国人なのに認めてもらえるなんて、ありがたい気持ちでいっぱいです!」
「外国人なのに認めてもらえるなんて、ありがたい気持ちでいっぱいです!」
「こちらは『ラーマーヤナ・ダンスドラマ』に出演した時のもの。ダンスだけでなく、ヒンディー語のセリフで演技もしました」
「こちらは『ラーマーヤナ・ダンスドラマ』に出演した時のもの。ダンスだけでなく、ヒンディー語のセリフで演技もしました」

 この先も頑張って練習を積み、いつか本場インドでカタックダンスのプロとして認められるようになりたいですね! あと5年はかかるかなぁ(笑)。今47歳なので、53歳の頃には一人でステージに立っていたいです。インドでは年齢のことなんてふだん聞かれませんし、私も自分の年を忘れるくらい意識していません。70歳になっても、80歳になっても、踊れるまで踊っていたいです。私の師匠も今60歳ですけれど、現役バリバリ。ステージに立っていると40代に見えるほど生き生きと輝いています。師匠のお母様も90歳代まで舞台に立ち、足が悪くなっても椅子に座りながらパフォーマンスを続けていました。私も、そんな舞踊家になりたい! 大好きなインドで、一生をかけてカタックダンスを極めたいと思っています。

Profile
ヒロコ・サラさん
インド古典舞踊カタックダンサー、ボリウッド・インディアン・ベリー・フュージョンダンサー、TV CMモデル。インドの古典舞踊カタックダンス、ボリウッドダンス、ラージャスターニ・ジプシーダンス、中東のベリーダンスなどを学び、インド各地で開催されるイベントに多数出演。日本に一時帰国時には、インド大使館やインドレストランなどのイベントでダンスを披露するなど、古典舞踊カタックダンスをメインに、日印両国でパフォーマンス活動中。ホームページ:http://sarahhiro.seesaa.net/

聞き手・文/金田妙 写真/清水知恵子