業務時間の約2割を所属部署の業務以外に…「15%ルール」とは?

 業務時間の一部を、所属する部署の領域以外に充てることができる「15%ルール」。導入の背景には、従来のビジネスの在り方をそのまま踏襲していては「スピード感のある時代の変化についていけなくなるのではないか」という強い危機感がありました。

 かつて「ラーメンからロケットまで」と呼ばれた総合商社。多様な商品、そして幅広いネットワークを武器に、一つの企業体としていくつもの事業を束ねるビジネスモデルを実践してきました。一方で、営業本部ごとに専門性を追求した結果、組織の縦割り化による弊害が指摘されてきたのも事実。

 「15%ルール」をはじめとした今回の改革を推進するのは、デジタル・イノベーション部。上杉理夫イノベーション・市場戦略課長は「これまで営業本部は、それぞれ商品ごとに分かれた組織の枠組みの中で成果を出す『タテの深化』に力を注いできました。しかし今後、変化の早いビジネス環境に対応するためには、従来の枠組みにとらわれず、全社横断的に物事に取り組んでいく『ヨコの深化』を推進していくことが不可欠です」と語ります。

 商社はいわば、巨大なプラットフォームのようなもの。事業間、社内外、国境などあらゆる枠組みを超えて、保有する資産やビジネスモデルを掛け合わせることにより、新しいビジネスを創出できそうです。

 「『15%ルール』は社員に対する強制ではありません。ただ、会社として新しい取り組みを実施する時間を確保し、新しいチャレンジを後押ししたいと考えています」(上杉さん)

「『15%ルール』は強制ではありません。あくまで、会社として社員のチャレンジを後押しする制度です」(上杉さん)
「『15%ルール』は強制ではありません。あくまで、会社として社員のチャレンジを後押しする制度です」(上杉さん)

 時間のルールを設定するだけでなく、社内外の人材交流を促進する制度、ビジネスプランコンテストの開催など、アイデアが生まれやすくする「仕掛け」も併せて打ち出しました。

導入から約半年… 現状の参加者は

 「15%ルール」の導入は2018年4月。導入当初に実施したアンケート調査では、社員の約2割がこの制度を活用している状況でした。人事部の細川悟史企画課長は「アンケートの実施後、ビジネスプランコンテストの募集も始まり、10月現在では活用度はさらに伸びています」と手応えを語ります。

 実際、ビジネスプランコンテストの説明会には、300人以上が参加。「当初は若手社員ばかりだろうと予想していたのですが、40代、50代以上の社員も多く、新しい取り組みに対して幅広い年代の社員が関心を持っていて驚きました」(上杉さん)