「隙間時間に他の仕事を手伝うことができたら」

 入社3年目にして今回ビジネスプランコンテストへのチャレンジを決めた田子さんは、どうして「15%ルール」を活用し、コンテストの参加に至ったのでしょうか。きっかけは、先輩との「雑談」でした。

 決算の仕事に携わる田子さんの所属部署の繁忙期は、数字をまとめなければならない四半期ごとにやってきます。決算期は「夜遅くまで頑張らなければならない日もある」(田子さん)一方で、その期ごとの繁忙期が一段落すると、業務に余裕が生まれるそうです。

 「別の部署の同期と一緒にランチなどをしていると、それぞれ繁忙期が違うんです。例えば、自分の業務が忙しくない時期に、人手を必要としている他部署の業務を手伝うことができたら、会社全体としても生産性が上がるのでは……? 先輩に、そんな思い付きをぽつりと話したことがきっかけでした」(田子さん)

 その「雑談」をしたのは2017年のことでしたが、田子さんのアイデアを覚えていた先輩から今夏、「あれ、やってみない?」と声を掛けられました。新規事業の提案などをオンラインで気軽に投稿できる「アイデアボックス」を通じて自分の考えを伝えてみたところ、ビジネスプランコンテストに応募してみてはどうか、という話になったといいます。その後、デジタル・イノベーション部に所属する、新規事業の立案なども経験したベテラン社員がアドバイザーを担当。現在は、田子さんと雑談をした先輩を含む4人のチームでコンテストに応募するプランを練っています。

「やりやすい部署、やりにくい部署、差はある」

 たわいない雑談が、思いがけず新しいチャレンジへとつながった田子さん。全社一斉のメールで「15%ルール」の導入が知らされた時のことを振り返り、「部署によって反応はさまざまだった」と話します。

 就業時間の15%を新しいチャレンジに活用するといっても、もともと取り組んでいる担当業務の成果を落としていいわけではありません。新しいことに挑戦しよう、そのために本業のこれまでのやり方を見直し、効率化していこう――。まずは管理職がそんな積極的な姿勢を示し、職場の空気をつくっていけるかどうかも、制度の実効性に影響します。

 「(『15%ルール』を)使いやすい部署、使いにくい部署がある」というのも一社員としての田子さんの本音です。「私の部署は、繁忙期のめどがつきやすく、計画的に仕事を進めやすい。同期の中でも、私と同様、チームを組んでビジネスコンテストに応募する事業を考えている人もいます。一方、常に忙しく決まった繁忙期がない部署では、また違った工夫も必要になるのかもしれません」(田子さん)