副業をやっていてよかったことは?

――皆さん、苦労もありますが「副業していてよかった」と思うのはどんなことでしょうか。

Aさん 自分のこれまでやってきたことが「言語化」できて、市場価値が明確になったと思います。創業期に入社した本業の企業は、今は数百人規模まで成長しました。その経験を今、副業先で役立てられている。単純に楽しいです。

「副業を始めたことで、自分の経験やスキルを言語化でき、市場価値が分かりました」(写真はイメージ) (C)PIXTA
「副業を始めたことで、自分の経験やスキルを言語化でき、市場価値が分かりました」(写真はイメージ) (C)PIXTA

Cさん 本業・副業の両方に身を置くことで、それぞれの仕事を客観的な視点で見られるようになりました。業界も職種も異なりますが、それによって仕事に深みが生まれる。時々、シナジー効果が発生する瞬間もあるのが面白い

Bさん 副業のコワーキングスペース運営では、本業での経験をもとに仮説を立てることがあります。それがうまくいくとうれしいですね。確かにスキルが身に付いていることを実感できます。「お小遣い程度」でも、副業での収入は自分のスキルへの対価だから、自立している感覚も強まりました。以前は押しに弱い性格だったんですが、今は「嫌なことは嫌」と言いやすくなった気がします。

――なるほど。皆さんの経験談をお聞きして、副業は単なるお小遣い稼ぎではなく、「自己のスキルを最大限に生かせる場」になることが分かりました。ありがとうございました!

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 本業で身に付けたスキルを、誰かのために役立てたい。全く違うコミュニティーに飛び込んで、自分の「軸」を増やしたい――。副業に求めるものは三者三様でしたが、共通していたのは「どんな自分でありたいか」を明確にイメージできていること。「ありたい自分」のイメージが持てれば、日々の時間の使い方も変わってきます。一方で、副業OKの勤務先で働いていても、周囲の理解を得るためには試行錯誤が必要な様子です。副業はお金を稼ぐ手段ではなく、働く楽しさや、人生の幸福度を最大化するための選択肢。今は、そんな価値観が広まっていく転換期といえるのかもしれません。

聞き手・文/加藤藍子 写真/PIXTA