仕事に対する考え方が変わった

 その後も何度か会社帰りに飲みに行き、Fさんとはすっかり「飲み友達」になっていました。Fさんが会う度にとても楽しそうに仕事の話をするので、りかさんは入社6年目にして初めて「仕事ってそんなに面白いものなんだ」と、目がさめるような感覚を覚えたそうです。

 それまで、仕事は「効率的にお金を稼ぐ手段」だと考えていたりかさんでしたが、仕事好きのFさんとの出会いは、徐々に彼女を変えていきました。「もっと自分らしい働き方があるのではないか」。Fさんのように仕事に打ち込みたいと願い、以前から興味のあった英会話スクールに通うなど、りかさんは行動を起こし始めました。

英語を学びたい、もっと仕事に打ち込みたいと思わせてくれる彼 (C)PIXTA
英語を学びたい、もっと仕事に打ち込みたいと思わせてくれる彼 (C)PIXTA

 自分の考え方に影響を与えてくれたFさんを、りかさんは次第に信頼するようになります。二人は出会って2カ月ほどで交際をスタート。りかさんが重視していた「ローンが組める相手」でもあるFさんは、自然と結婚相手の候補になっていました。

「喧嘩もほとんどしないし、ちゃんとしたサラリーマンだし。もしかしたらこの人と結婚するのかも」

 しかし、付き合って3カ月、その考えにかげりが見え始めます。

大切にされていない気がする

 いつ違和感を覚えたのか、きっかけは定かではありませんでした。ただ、りかさんは漠然と、「自分は恋人なのに、この人に大切にされていない気がする」と感じていました。「喧嘩をしないのは、私がつい彼に意見を合わせているからでは?」「彼は私の本音が気にならないの?」。違和感は不安や不満になり、どんどん広がっていきました。

 このころ、Fさんの自宅へ遊びに行く機会が増えていたりかさん。いつも通り彼のマンションで過ごしていると、ふと気になるものを見つけます。それは、付き合った当初おそろいで買ったマグカップ。よく使うので普段は流しに置きっぱなしなのに、この日はなぜか食器棚にきちんと収納されていました。

 りかさんは、漠然とした違和感の正体に気がつきます。

「彼は、誰かに私の存在を隠している」