3 自責のすすめ――お叱りは手帳に書き留めておこう

 失敗もそうですが、叱られた記憶も普通の人にとっては早く忘れたいもの。ですが及川さんの場合は、手帳に専用のページを作って叱られた内容を全部書き残しているそうです。

 「後から読み返すと上司のお叱りの中には含蓄のある言葉も多くて。そのページは毎回手帳を変えるたびに書き写しておきます」と及川さん。環境はすぐには変えられない、でも自分の行動はいつでも省みることがきる。そのためにもなぜ叱られたかを書き留めて、自責で物事を考えるようにしているそうです。

「上司のお叱りの中には含蓄のある言葉も多いんです」と手帳に叱られた時の言葉を記している理由を語る及川さん
「上司のお叱りの中には含蓄のある言葉も多いんです」と手帳に叱られた時の言葉を記している理由を語る及川さん

4 昇進のすすめ――やりたいことがあるならリーダーになろう

 取締役という立場がいかに大変かは、働く女性なら想像に難くありません。しかし一方で、「やりたいこともできるようになった」と及川さんは笑顔で断言します。

 これまで慣れ親しんだポジションを捨て、ストレスフルな環境に身を置かないと分からないことが山のようにある。それでも、やりたいことができるようになって仲間も集まってくるので、「管理職になるチャンスがあるなら、ぜひ志していただきたいです」と女性たちの背中を押します。

5 有言実行のすすめ――口に出すことが実現への近道

 「こういうことがしたい!」と言葉にして発信しておくと、誰かの心に残っていて、手を差し伸べくれる人が出てくることがあります。さらに、「人というものは自分に嘘をつきたくないですから、言葉にしておくことで自分自身にも暗示がかかるんです」と及川さんは言います。言葉にした内容がすぐに実現するとは限りませんが、実現がぐっと近づいてくると力説します。

 幾多の困難を乗り越え、こうありたいという自分像を実現してきた及川さんだからこその説得力に、思わず会場の女性たちも神妙な面持ちで耳を傾けました。

6 「可能性の扉」は自動ドアではない。待っていても開かない

 ここまで及川さんの言葉を聞いても、まだ鎖を解く自信がない、という方もいるかもしれません。変わりたいと思ったとき、最後に重要なのはちょっとした勇気だと及川さんは教えてくれます。実際にポーラのビューティーディレクターとして働く女性の中には、病気と戦いながら活躍していたり、今や複数店舗を経営するオーナーになったという主婦の方もいたりします。

 「可能性の扉は自動ドアではありません。どうか怖がらずにノックしてみたり、押したり引いたりしてみてください。その扉の先には皆さんを助けてくれたり、ヒントをくれたりする人もたくさんいると思います。自分が予期しない成長が手に入れられる可能性の扉を、ぜひ皆さんのその手で開けてくださいね」(及川さん)

 取締役として、妻として、そして母として、どの立場の自分もベストだと思える「諦めない働き方」をエネルギッシュに実践してきた及川さんの体験に基づく言葉に、会場の女性たちからは盛大な拍手が送られました。「縛るな。縛られるな」――この言葉に少しでも思い当たる節があるワーキングウーマンの皆さんは、自分だけの扉を見つけて、ぜひ勇気を出してノックしてみてください。

文/金澤英恵 写真/竹井俊晴

私らしいキャリアを築くために ~これからの生き方・働き方~
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