黒住 妊活する人が、栄養面で気を付けることはどんな点ですか。

細川 たんぱく質の摂取ですね。たんぱく質は血液や女性ホルモンの原料になりますので、片手の手のひらほどの分量を毎食、食べてほしいです。例えば朝は納豆、昼は生姜焼き、夜は煮魚といったメニューでOKです。また、妊活中は特にビタミンD、DHAが必要です。魚はどちらも豊富に含んでいますので、「週3回は魚」を心掛けましょう。飲み会があるなら居酒屋でお刺身を選び、デートならお寿司にするとか、工夫をしてください。

栄養面では、やはり「たんぱく質の摂取」が重要
栄養面では、やはり「たんぱく質の摂取」が重要

黒住 魚の中でもおすすめはありますか。

細川 種類というよりは、調理方法ですね。DHAは揚げる、煮るといった調理によって20〜30%損失します。なるべくなら、お刺身がいいですね。「お魚は毎食食べるとエンゲル係数が増える」という人は鮭フレークやツナ缶を取り入れるといいと思います。

黒住 前半のお話でもありましたが、妊活には受精約100日前からの栄養が大切で、赤ちゃんのその後の発達にも影響を及ぼすのですね。実は今日のセミナーの中で、この点が一番重要なので、皆さまに覚えて帰っていただきたいと思います。竹田先生、この受精期のことを胎盤の話を含めて、もう一度教えてください。

竹田 受精卵が細胞分裂して、赤ちゃんに育っていく過程では、胎盤から栄養を取ることが重要になります。うまく胎盤ができないと赤ちゃんは栄養を取れませんので、受精卵が子宮に着床する、まさに“母子の最初の接点”が肝心なんです。受精卵が胎盤をはじめ、遺伝子やあらゆる内臓器官をつくるのにはビタミン、ミネラル、酵素といった栄養分が必要になります。

黒住 なるほど。受精卵という「原料」があっても、栄養がないとその先に進みにくくなるのですね。こうした基本的なことを学校でも学ばなかった気がします。

 今日伺った「3世代の健康状態に影響が出る」といったお話はショッキングでした。これから妊娠・出産をする方は、気を付けることができますが、もし、既に低出生体重児で生まれてしまった赤ちゃんには、どんな対策があるのでしょうか。会場の福岡先生、お聞かせください。

⽇本DOHaD学会代表の福岡秀興さん
⽇本DOHaD学会代表の福岡秀興さん

福岡 既に低出生体重児を出産されたお母さんにはショックな内容だったと思います。でも方法はあります。日本DOHaD学会、国際DOHaD学会では「リスクを持つ子をどう育てるか」の研究を進めていますし、薬剤の開発も進んでいます。また、家庭では「積極的なスキンシップ」を心掛けて、愛情を注いで育てることで、赤ちゃんの病気のリスクをコントロールできることが明らかになってきました。決して不安になることはありません。気を付けたいのは、「うちの子は小さいから」といって、急激に体重を増やそうとしないこと。「小さく生んで急激に大きく育てる」ことほど病気のリスクを高めることはありません。

黒住 急に体重を増やし過ぎないように、ゆっくり増やすように親がコントロールしなくてはいけないのですね? 小さく生まれたら、小児科の先生に相談してアドバイスを受けるとよさそうですね。

福岡 低出生体重児だからと悲観することはありません。20世紀最大の政治家の一人で、ノーベル文学賞も受賞したウィンストン・チャーチルも実は低出生体重児でした。信じられますか?「小さく生まれても、たくさんスキンシップをして子育てするんだ」と自信を持って子育てに励んでください。

竹田 お母さんが心身ともに安定しているのが一番です。胎児にも子どもにも、母親のストレスは伝わります。ストレスをためないようにして、自律神経、ホルモンのバランスを整えてください。