知っておきたい 新・旧デトックスの違い

 そもそもデトックスとは、日本語で「解毒」という意味。西沢さんは、江戸時代に描かれた絵にも解毒を表す「けとく」の字があると言います。

 「江戸時代、日本は世界で最も薬品学が進んでいた国の一つと言われています。そして当時の絵を見ると、日本橋の薬種問屋の店先に『けとく』と書かれた看板があるのが分かります。鎖国の江戸時代に日本独自の医療知見を組み込んで中医学を発展させた「漢方」、そのキーワードの一つが解毒だったと思われます」(西沢さん)

日本では古くから「解毒」という言葉が使われていました
日本では古くから「解毒」という言葉が使われていました

 さらに遡ってみると奈良時代の書物にも記載があり、日本では古くから「解毒」という言葉が使われていたことが分かりました。

 この「解毒」が「デトックス」という言葉に変わり、流行したのが約10年前。食物繊維で便通を良くするファイバー・デトックスや、腸を休めてリセットする週末断食、肝臓の解毒力をアップする解毒ジュースなど、毒を排出する力を高める方法を中心に一大ブームとなりました。

 一方、現在再燃している新デトックスでは、腸で毒を発生させないことや体のデトックス力を細胞レベルから高めたりする方法が注目されています。およそ、ここ10年の間に世界各国で進んだ腸内細菌叢(そう)研究、断食時に起きるオートファジーがもたらす病気予防効果に関する研究など最先端のサイエンスを踏まえて、今、新たなデトックス習慣が提唱されているのです。

 「腸の中には、たんぱく質を好む菌や脂質を好む菌がいます。これらの菌が生み出す物質中には、体に悪さをする毒の一種が含まれます。さらにこれらの菌が好む腸内環境では、乳酸菌やビフィズス菌などメリットの多い菌が生きづらくなってしまうことが分かりました。乳酸菌やビフィズス菌が減って腸のバリア機能が崩れると、腸内にとどまっていた毒が血液を通して体中に回ってしまうことも。新デトックスには、『腸内環境を整えて全身を毒から守りましょう』というメッセージが込められているんですよ」(西沢さん)

 「口腔内や胃、十二指腸、腸と、人間の体内ではさまざまな場所で消化酵素が分泌されています。しかし酵素は毎日一定量しか作られません。人間の体は常に限定生産で動いているため、消化しきれないほどの食物を摂取すると酵素が足りず、腐敗して毒となってしまうのです。だからこそ食物と酵素の関係を見直し、毒の発生原因を追究して、追加分の酵素を外から取り入れる新デトックスが注目されているのです」(鶴見さん)

 また、下痢を発生させる菌の中に、鬱のような症状を引き起こす物質をつくる菌がいることを指摘した研究もあります。腸内の環境改善は、体だけではなく心の健康にもつながると考えられています。

 さらに、たんぱく質の過剰摂取による腸のダメージケアにも新デトックスが向いているとのこと。特に生野菜や果物に含まれている酵素がデトックス効果を発揮するそうです。