女性が活躍する企業が好業績な3つの理由

日産自動車取締役、産業革新機構代表取締役会長CEO・志賀俊之さん

 続いて今回のイベントの「黒一点」、日産自動車元COOの志賀俊之さんが登壇。「なぜ、女性が活躍している企業は好業績なのか」をテーマに講演を開始。志賀さんは「なぜ」という問いかけへの答えとして、3つのフレーズを挙げた。

 1つ目は「イノベーションが生まれる」こと。「イノベーションは多様性から生まれる」ということを耳にしたことのない人は、少ないだろう。志賀さんはこの点について、「『男社会』ともいえる日本の企業社会で、活躍する女性が増えれば、男性の視点にはなかった考え方が組織に投じられるはずです。相互の意見の違いを明確にしてディスカッションしながら答えを出していくことが、イノベーション(変革)につながります。ですから、女性は『異質な個』として組織で活躍してほしい」と語る。

 ただしそのためには、経営層が「異質な個」を認める度量を持つことが前提だ。志賀さんは、企業が多様性を受け入れる上での心構えや環境づくりについても、その重要性を強く主張した。

 業績が上がる2つ目の理由は、「女性活躍推進に取り組んでいる企業の経営者は、変革自体に積極的である」ということ。ただし、トップが積極的であっても、それだけではうまくいかない。

 「男性社員の大半は、女性の役員登用を面白くないと感じていると思っておいたほうがいいでしょう(笑)。彼らのような、変化を恐れる人たちを『粘土層』というのですが、この粘土層を砕く過程には非常に困難が伴いますので、覚悟が必要です」(志賀さん)

 志賀さんは「抵抗勢力としての男性社員の存在」を指摘する一方で、女性たちにも注意を喚起した。「多様性を生むきっかけになるのは、男性社会の中に入った女性が覚える『違和感』です。ただし女性が長く組織にい過ぎると、男性以上に『男性社会の常識』に染まってしまうことも少なくない。ですから女性は、会社に入って最初に抱いた違和感を大事にしてほしい」(志賀さん)。

 3つ目は、「男女の『協働』そのものが、成果につながる」ということ。志賀さんはこれについて、「掛け算」を例に解説した。

「役員が全体で100人いるとします。このうち、女性役員が10人いるときの成果が、『90(男性)×10(女性)=900』という数式で導き出されるとしましょう。ここで女性の比率を増やし、男女比を『50:50』にするとどうなるか。『50×50=2500』で、先ほどの3倍近い数値になります」(志賀さん)

 ただしこの考え方は、会社が個を尊重することが前提になっているのは言うまでもない。異質な個が切磋琢磨(せっさたくま)して仕事ができる環境を整えれば、「掛け算」で大きな力を発揮し、企業の成長につながっていくのだ。

 企業におけるダイバーシティとはつまるところ、「異質な個」が共存し、力を発揮できる環境づくりではないだろうか。志賀さんは日産がダイバーシティを重視する理由について「車種に関わらず、購入を決めるのは6割が女性です。女性が活躍している会社は顧客のニーズをしっかり捉えられるので、業績が上がるのは当然ともいえるでしょう」と語った。

 「無形資産」を大事にしてほしい――。最後に志賀さんは、昨今注目されている働き方改革について、そんなメッセージを送った。無形資産とは、家族や友人、自分の趣味に費やす時間などを指す。こうした時間を過ごすことで心を豊かにし、働きがいと生きがいを両立させることが大事だという。

 「皆さんが執行役員や取締役といった『4000人の中の1人』を目指すのは、単に肩書きのためだけではなく、自己実現するためであってほしい。そして、人生を豊かにしていってほしい」。志賀さんはそんなエールで、講演を締めくくった。