女性役員に必要なリーダーシップの育成――エグゼクティブ・プレゼンスについて

 エグゼクティブ・プレゼンスという言葉を聞いたことはあるだろうか。「女性役員に必要なリーダーシップの育成――エグゼクティブ・プレゼンスについて」をテーマに登壇した秦純子さんはアクセンチュアでのコンサルティング業務と並行し、大学などでマーケティング論やリーダーシップ論などを教えてきた。そんな秦さんの「実演」を交えた講演は、会場を大いに沸かせた。

米国経営者が必要とする「リーダー要素」とは

 アクセンチュアは非常にダイバーシティを重視している企業だ。女性社員の比率は高く、グローバルで約40%を占める。当然、管理職や役員に占める女性比率も高い。そんな同社は、女性社員に対してどのような「リーダーシップ教育」を行っているのだろうか。

 アクセンチュアでは、「マネジャー」と「リーダー」が明確に違うものだという前提のもとで、リーダーシップ教育を行っている。例えば、マネジャーは「今いる場をしっかりケアしていく人」であり、「複雑な現状を乗り越えようとする人」。リーダーは、「新たな世界にみんなを連れていく人」「先行きの不透明さを乗り越えていこうとする人」といった具合だ。そうした違いを踏まえた上で、リーダーになる難しさや、求められる素養を教えていくという。

アクセンチュア製造・流通本部マネジング・ディレクター 秦 純子さん

 信頼性、交渉力、俊敏性、グローバル・プレゼンス、強いネットワーク、影響力、エグゼクティブ・プレゼンス、EQ――。これら8つは、アクセンチュアが「企業の意思決定層としてのリーダー」が備えるべき能力として定義しているものだ。

 秦さんはこの8つの中でもあまり耳なじみがなく、かつユニークな要素である「エグゼクティブ・プレゼンス」をピックアップし、紹介した。

 「水に小石を落とすと波紋が広がるように、個人の行動は思いがけないほど遠い範囲に影響を及ぼすことがあります。リーダーはどう振る舞い、どう発言するのか。そしてそれが周りにどのような影響を与えるのかを考え、予測することが大事。これがエグゼクティブ・プレゼンスの要諦です」(秦さん)

 つまり、リーダーの発言や立ち居振る舞いを通して、「この人に付いていくと頼りになりそうだ」「このリーダーは逆境にあっても、プレッシャーに打ち勝つ力や決断力を提供してくれる人だ」などと部下に思わせる、「リーダーとして備えておくべき素養」であるといえるだろう。アクセンチュアの調査でも、米国企業の経営者の3分の2が、エグゼクティブ・プレゼンスを「非常に重要な要素」だと認めているという。

 ではこうした要素は、どのようなところに表れるのか。それは、論理的な説明や説得力、聞き方などの会話のスキルはもちろん、態度、見た目、表情、動作だという。そのためにも、部下などの相手の心理状態や周囲の状況を分かった上で、コミュニケーションを取っていくことが極めて重要となる。

 コミュニケーションは、何を伝えたいかといったメッセージが非常に重要だが、効果的に伝えていく上で物理的なもの――例えばボディーランゲージや歩き方、座り方なども決して軽視できないという。服装や髪型、持ち物といったパーソナルスタイルも、「自分がどういう人間であるか」を周りに伝えていく上で非常に重要だという。

「思い通り」の印象を相手に与える

 アクセンチュアでこうしたトレーニングを行うときは、会議室に入室する時のアイコンタクトの仕方から、歩き方、室内のどの席にどのように座るのかというところまで、ロールプレイを交えて実践するという。

 そこで秦さんは会場の来場者たちに、見ず知らずの隣同士で自己紹介をし合い、その後にそれぞれの印象を語らせるワークショップのような実践を提案。自己紹介タイムでひとしきり盛り上がった後に、秦さんは「相手に与えた印象は、自分の思惑通りの与えたかった印象でしたか?」と問いかけた。

 その上で、「些細なひと言やしぐさであっても、リーダーが組織に与える影響は予想以上に大きい。だから、発した言葉がどのように周りに伝わるのか、戦略的に考えることが必要なのです。一方でリーダーとは、孤独なものでもあります。自分が周りにどういう影響を与えているのかについては、フィードバックを得る機会がありません。だからこそ、エグゼクティブ・プレゼンスを身に付けることは、女性がリーダー層になって活躍する上で、大きな武器になるはずです」と秦さんは力説した。