全額賠償してもらえるの?

 相談者の傘は5000円以上したとのことですが、もしも裁判を起こして店側が敗訴したら購入時にかかった額のお金を賠償してもらえるのでしょうか。

 答えはNO。法的には「時価」、つまりなくなったときの傘の、中古品としての価格に見合う額が賠償額になります。例えば1年使った傘なら、似たような傘が中古市場でどのくらいの額で売買されているかが賠償額の参考になります。

 「新品に買い替える分のお金を払ってほしい」と考える人も多いですが、店側には紛失時の傘の時価相当分しか賠償責任は発生しません。裁判にかかる費用を考えると、訴えても赤字に終わることが大半。冷静に話し合い、双方の「折り合い」をつけるのが最善の解決策でしょう。

 ちなみに、店側の対応が悪かったからとネット上にお店や店員が特定される形で悪口などを書くと、場合によっては名誉毀損で訴えられることも。衝動的な言動には注意しましょう。

Q. 居酒屋で傘がなくなった! これってお店の責任?

A. 傘立てに入れたときの状況による

この人に聞きました
原田和幸
原田和幸さん
弁護士
原田綜合法律事務所代表。岡山県倉敷市出身。上智大学法学部法律学科を卒業後、不動産会社に勤務。明治大学法科大学院を経て現職。不動産問題のほか離婚問題や相続関係にも詳しい。

取材・文/瀬戸久美子 漫画/ハラユキ 写真/PIXTA

日経ウーマン2017年8月号掲載記事を転載
この記事は雑誌記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります