木村文乃
1987年10月19日、東京都生まれ。映画「アダン」のヒロインオーディションのグランプリとなり、2006年公開の同作にて女優デビュー。以降、映画・TVドラマ・CM・舞台などにて幅広く活躍。主な出演作に、映画「風のダドゥ」「ポテチ」「今日、恋をはじめます」「すべては君に逢えたから」「小さいおうち」「ニシノユキヒコの恋と冒険」「太陽の坐る場所」「くちびるに歌を」「ピース オブ ケイク」「イニシエーション・ラブ」、TVドラマ「NHK連続テレビ小説 『だんだん』『梅ちゃん先生』」「ソドムの林檎」「雲の階段」「銭の戦争」「マザー・ゲーム~彼女たちの階級~」「石の繭」「サイレーン 刑事×彼女×完全悪女」、舞台「不帰(かえらず)の初恋、海老名SA」「わたしを離さないで」などがある。公開待機映画に「十字架」「スキャナー~記憶のカケラを読む男」など。
スタイリング/藤井享子
ヘアメイク/野中真紀子

――これまでネイチャー・ドキュメンタリー作品はたくさん作られてきましたが、「シーズンズ 2万年の地球旅行」は時空を超えたストーリーものになっていて、個性的な作品であることが魅力的でした。ナレーターを担当された木村さんから見た、この映画の魅力を教えてください。

 「人間が出てくるというところが、すごく斬新だと思いました。動物が生きている姿をそのまま映すのがネイチャー・ドキュメンタリーだと思っていましたが、本作には人間も登場して、動物と人間との関わりを教えてくれています。動物が進化する歴史の中には、人間もいたということをつい忘れてしまいがちですが、この映画を見るとそれがよく分かるので、そこが魅力ではないかと思います」

――この映画の印象的なシーンは?

 「そうですね、動物たちはもう全部かわいくて、愛おしいと思えるレベルです! 監督をはじめとする製作スタッフが、どれだけ愛情を持って撮影したのか、すごく伝わってきました。人間のルールを押し付けず、自分たちが動物の仲間に入って『撮影させてもらう』という製作陣の気持ちを強く感じました。動物たちが、時には死と隣り合わせの危険な環境に身を置きながら一生懸命生きている姿を、本作ではありのままに映しています。カメラと動物との距離がとても近く、触れられるんじゃないかと思うくらい、毛の1本1本まで見えて、すごく引き込まれました」

ヒグマたちのふさふさした毛もよく見える。
ヒグマたちのふさふさした毛もよく見える。

――木村さんは、子どもの頃からネイチャー・ドキュメンタリー番組がお好きだったそうですね。特に、どんな作品が好きでしたか?

 「イルカが出てくる作品が好きでした。録画して何度も観るくらい(笑)。イルカの調教師になりたいと思ったこともあったんですよ。イルカは人とコミュニケーションがとれるし、頭もいいし、不思議な面もあって、何回観ても飽きませんでした」

――動物が大好きだそうですが、ペットを飼ったことは?

 「あります。今も猫を2匹飼っています」

――ペットを飼うことで大事なことや、動物から教わることって何かありますか?

 「そうですね、私はまずペット扱いはしないです。そして、人間のルールを押し付けないようにしています。例えば、猫が決められた場所以外でおしっこをしちゃったり、食べたものを戻したりした場合、その原因は人間にあるんじゃないかと思うんです。本来、猫自身はそんなことをしたくないはずで、何か人間がしたことに問題があるんだと思います。だから、そういう時は叱ったりせず、原因を探して、動物の気持ちを理解するようにしようとします」

――なるほど。参考になります。ところで、ネイチャー・ドキュメンタリーのナレーションは、かなえたい夢の1つだったそうですが、今回挑戦されていかがでしたか?

 「思っていた以上に緊張しました! 鶴瓶さんのナレーションがすごく素敵で、そこに私が肩を並べるかと思うと、さらに緊張しましたね。映画を観る時には、やっぱり映像に集中してほしいから、ナレーションはちょっとしたスパイスを加える感じでと思って、なるべく癖がないように、水がスッと入っていくような話し方を目指したんですけど、ついつい自分の癖や波で声を出してしまう。私は東京生まれの東京育ちだから、逆に標準語について意識したことがなく、思ってもいないところで変なイントネーションが出てしまって。それを一つ一つ直すのが難しかったです」

――新しいことに挑戦するのは、お好きですか?

 「うーん、どちらかと言うと、日々平穏に生きたいタイプです(笑)。でも、しかるべきタイミングで、やるべき挑戦が目の前にあったら、それをやります。蜷川幸雄さん演出の舞台(『わたしを離さないで』)のお話が来た時や、主演ドラマ(『マザーゲーム』)の時は、まさにその“挑戦”でした。それがどんなに大変なチャレンジだろうと、今やるべきだと思ったし、今回のナレーションもそうだったんです。いきなりドンって大きなものが来た時に、『自分に実力があるのだろうか』とか、『初めてなのに大丈夫なのだろうか』という思いに押しつぶされそうになるけれど、そういう時『やらない』という選択肢は自分の中にはないんです」

――今後、演技のお仕事も含め、どのような展望を持っていらっしゃいますか?

 「演技の仕事だけにかかわらず、人として『こういう生き方っていいね』と言われるような生き方をしたいと常々思っています。誰かを目指すと、二番煎じにしかなれないから、マイペースにやっていきたいです」

――木村さんは、とてもおいしそうな手料理の画像を日々インスタグラムにアップされていますよね。すでに多くの女性たちから、素敵な生き方をされている、見習いたい女性として憧れの存在です! お忙しい毎日だと思いますが、お料理をすることは、木村さんにとって、どのようなことなのでしょうか?

 「最初はリラックスの一環だったんですけど、すっかり生活の一部になりました。ご飯って、毎日当たり前に食べますよね。私にとっては、わざわざ外食する方が大変で、仕事帰りにスーパーに寄って材料を買いさえすれば、全部家で済んじゃうから楽なんです。料理をするのは、母の影響が大きいですね。母は私と弟が学生時代、いつもお弁当を作ってくれて、冷凍食品が入っていることは一度もありませんでした。彩りが良くて、栄養のバランスが良い母のお弁当が大好きだったので、それが私にも根付いて、自然と料理をするようになりました」

――素敵なお母様ですね。バランスの取れた手料理は健康を保つためにも良いですよね。

 「そうですね。私は外食が続くと、お腹が痛くなっちゃうので、やっぱり家のご飯がいいですね」

――2015年は連続ドラマの主演や、映画出演も多く大活躍でしたが、2016年もさらにご活躍されそうですね!

 「2015年は、今回のナレーションの仕事もそうですし、刑事役でアクションにも挑戦したり、シングルマザーのヒロインを演じたりと、さまざまな経験をさせていただいた年でした。2016年も、目の前のことを一生懸命にやっていきたいです。経験を積めば積むほど、責任とプレッシャーはどんどん重くなっていくと思いますが、自分に発破を掛けながら良いものを作っていきたいと思います」