「晩年は、愛する人に捧げたい」パオロ・ソレンティーノ監督

パオロ・ソレンティーノ(監督・脚本)
1970年、イタリア・ナポリ生まれ。2001年「L'uomo in più」で長編監督デビューし、イタリア映画ジャーナリスト協会賞新人監督賞受賞。2004年の「愛の果てへの旅」でカンヌ国際映画祭コンペティション正式出品を果たし、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では作品・監督・脚本賞を含む5部門受賞。2008年の「イル・ディーヴォ -魔王と呼ばれた男-」はカンヌ国際映画祭で審査員賞に輝き、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では7部門を獲得。2011年の「きっと ここが帰る場所」はカンヌ国際映画祭全キリスト協会審査員賞などを受賞。2013年の「グレート・ビューティー/追憶のローマ」はアカデミー賞外国語映画賞を始め、ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞など主要な映画賞を多数受賞した。

――「グランドフィナーレ」は映像と音楽がとても美しくて素晴らしかったです。特に映像美に心を奪われました。本作では、どんな点を工夫されましたか?

 「この映画では、カメラワークは抑えようと心がけたよ。本作はセリフが多く、俳優に焦点を当てるために、あまり出しゃばった感じにしたくなかったんだ」

撮影中のパオロ・ソレンティーノ監督(中央)

――本作の主人公フレッドと娘のレナの関係を描いているところは、多くの女性が共感できる部分だと思います。家族に対して関心を持ってくれなかった父親に、レナは怒りをぶつけ、今、自分が不幸なのも父のせいだと考えているように見えます。この父娘を描くにあたって、ご自身や近しい人の実際の人間関係を参考にしましたか?

 「この関係について、特にモデルにした人たちはいないんだよ。お互いを深く愛し、果てしない優しさを持っているのに、なぜか距離を感じてしまうという父と娘。そんな父娘の難しい衝突を想像しながら描いたんだ」

――監督ご自身は、フレッドとレナの関係をどう思いますか?

 「フレッドとレナの間柄は、人生の中で進化する関係性として描いた。一群の思い出や記憶を経た関係性だ。彼らの何年にも渡る思い出や記憶は、劇中フレッドが指摘するように薄れていくものだ。それが、父親と娘がある特定の時期を過ぎると、お互い他人のように感じてしまう理由だと思う」

――フレッドは音楽中心の人生を送ってきましたが、彼のように家族を顧みず、仕事中心の人生をどう思いますか?

 「フレッドは、ただ単に仕事に人生を費やしてきた男ではないんだよ。彼の最大の気がかりは、娘と共通の言語がなかったために、娘と真の関係性を築いて来なかったことであり、自分がどれだけ娘を愛しているか、彼女に理解してもらえていないということなんだ。フレッドは、音楽が彼にとって解放できる場所であり、人生の無秩序な流れが唯一整うものだと感じていたんだ」

――監督は80歳くらいになったら、フレッドのような優雅な引退生活を送りたいと思いますか? それとも、ミックのように若者たちに指導しながら、できる限り長く映画を撮り続けていきたいですか?

 「自分の晩年を、映画監督の仕事と直結させて考えてはいない。自分の愛する人たちや、興味のあることに捧げると思う。映画を作ることは肉体的、精神的に強くないとできないと思っているからね」

文/清水久美子

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