渡辺謙さんにインタビュー
――「追憶の森」は、ジワジワと心に染み渡ってくるような映画で、観終わった後にまた観たくなりました。とても素晴らしい作品だと思いました。渡辺さんは、本作の特にどこに引かれましたか?
「本作で描かれる死生観というものに、外国の人が興味を持つようになったんだなと、最初に思いました。ただ、本作のお話をいただいたのは、2011年の震災後すぐだったので、ちょっと僕には受けとめる余裕がないと思い、一旦ペンディングにしたんです。それが一昨年だったかな、ガス(・ヴァン・サント)が監督に手を挙げてくれて、これはすごく良い作品になるなと思って、オファーを受けました。今からお話することは、後からの答え合わせみたいになっちゃうんですけど…。」
「先日、胃がんを見つけていただいて、すぐに手術をして、あっという間に仕事に復帰できて、医学や科学が進歩していることをものすごく体感しました。昔だったら、見つけられなかったり、治らなかったりして、人は亡くなっていたんだろうなと思い、20代後半の時にも味わったような、『人生には必ず終わりがあるんだ』という感覚を久しぶりに抱きました。それは、何千年も人間が抱えている命題なんだなと再認識しました。だから、こういう映画を作ることにも、多少なりとも意味があると、答え合わせのようですが思いましたね」
――本作を観ていて、途中までは何度も胸が締め付けられるような苦しい気持ちになったりしたのですが、渡辺さんとマシュー・マコノヒーさんのお芝居が素晴らしく、グイグイと引き込まれました。精神的にも肉体的にもハードな撮影だったのではないかと思いますが、いかがだったでしょうか?
「あんなに大変になるとは、さすがに予想外でした(笑)。肉体的には問題なかったのですが、精神的にきつかったですね。撮影中は、自然と日常生活の“回転数”を落として、役柄の気持ちを保つようにしていました。撮影から帰ってきても、誰とも会わずに部屋の中でジーッとして、嫁さんとはメールのやり取りだけで、声は聞きませんでした」